著者
遠藤 恵理子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.60, 2007 (Released:2007-12-01)

統合失調症で開放病棟に入院中のA氏は入院6年目であるが陽性症状(妄想、滅裂思考など)と認知機能の低下があり、看護師や他患と時々トラブルを起こす事がある。A氏の心に中には「退院したい」という想いがあり、それを相手に上手く伝えられない事がトラブルに至る原因と考えられる。 A氏は人付き合いが苦手である事を自覚しており、ある時看護師にSST(社会生活技能訓練)を希望してきた。SSTはA氏にとって生活技能の改善が見られ退院へ向けての最初のステップにする為、その効果を見る事を目的に関わりをもった。個人SSTによる効果はアプローチの前後に精神科リハビリテーション行動評価尺度(REHAB以下リハブとする)で評価をした。 A氏は看護師に「いつからSSTをやるのですか」と積極的に声を掛けてきて意欲が感じられたが、訓練中は話が反れ、修正してもまた反れてしまう繰り返しが多く、進めていくのは困難であった。これは認知機能の障害が強く表れていたと考えられる。看護師の問題として話の反れた場合の軌道修正が上手く対応出来ず効果的なSSTにならない場合もあった。出来る時にはA氏にメモをとって貰いロールプレイを行って、宿題を出してみたが実践するのは難しく、A氏が自信をつけて貰える様褒めながら関わりをもったが般化する事は難しかった。A氏が訴えてきた場合には傾聴しつつ正の強化を与えていった。リハブの結果では「ことばの技能」は変化が無かったが「ことばのわかりやすさ」においては障害があるという方向から普通状態になった。以前はA氏の質問を一度に聞き取れず聞き返すと易怒的になり待つ事も出来ずにいたが個人SSTを実施するようになってからは易怒的になる事は少なくなり、看護師がすぐに対応出来ない場合、理由を話すと待つことが出来るようになった。個人SSTをする事はA氏にとってストレスがかかる事であったと思われるが看護師がじっくりと落ち着いて関わりをもった事がA氏にとって良い刺激になり心地良い程度のストレスになっていたのかも知れない。 「セルフケア」は変化が無く「社会生活の技能」に関しては普通状態から障害がある方向へと悪くなっている。担当看護師とA氏で小遣い管理などについて話し合い、その場ではA氏は理解出来て決めた計画を毎日継続していくのは困難であり、現実検討能力の低さや認知・学習障害(融通の利かなさ)が現れていた。状況によって分り易く説明し、決めた事を継続出来るよう関わりをもつ事が必要である。 A氏とに関わりから患者の訴えを傾聴し、共感的態度を示し信頼関係を築く事が改めて大切であると感じ_丸1_患者と共に入院生活のあり方や看護計画(患者目標)を話し合い、援助する事が大切である _丸2_看護師は患者の持っている能力の可能性を信じ継続した援助をしていく事が重要である事を学んだ。