著者
遠藤(飛川) みのり 曽根 一純
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.131-139, 2020 (Released:2020-06-30)
参考文献数
25

関東,四国および九州沖縄地域の観光農園を対象に質問紙を配布し,面積などの農園の特性を踏まえたイチゴ品種の利用実態を調査した.その結果,関東地域に比べ都市的地域が少ない四国,九州沖縄地域の農園では,果実を摘み取りや直売以外にも多用途に利用している傾向があったものの,いずれの地域においても農園当たり約4品種の併用が認められた.また,品種別では, ‘紅ほっぺ’ や ‘かおり野’に代表される,草勢が強く高設栽培適性が高い,早生,多収品種の利用率が高かったほか,晩生や少収傾向の品種の利用も多く認められた.品種選定において重視する事項の調査結果から,農園が異なる早晩生の品種を複数利用する動機は,収穫時期の拡大よりも,収穫時期や果実品質の平準化にあると推察された.なお,いずれの地域においても,観光農園が利用品種を選定するうえでは,連続開花,収穫性の他に,果実品質や病害抵抗性を重視する傾向が認められた.今後は,多品種の併用に関する技術開発とともに,上述の特性を併せ持つ観光農園向け品種の開発が期待される.
著者
遠藤(飛川) みのり 曽根 一純
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.95-104, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
6

品質保持効果の高いイチゴ果実の輸送方法を確立することを目的に,新型容器およびMA包装を併用してイチゴ2品種を東南アジア2か国へ航空便および船便にて輸送し,品種別に包装資材を検討した.その結果,航空便においては‘福岡S6号’は伸縮性フィルム容器,‘おいCベリー’は宙吊り型容器を用いることで損傷程度の低減効果や果実硬度低下の抑制効果が期待できることが明らかになった.容器による品質保持効果が品種によって異なったことから,イチゴ果実の輸送において,容器および品種選定の必要性が示唆された.また,船便においては,損傷程度は新型容器により概ね低減されるものの,MA包装を併用することにより維管束のにじみなどが防止できることが明らかになり,新型容器に加えてMA包装の使用が推奨された.なお,MA包装の有無や品種,輸送条件を問わず損傷程度は損傷した果実の割合と高い相関を示し,イチゴにおいては損傷した果実の割合を元に損傷程度を評価できると考えられた.また,損傷する果実の割合を低下させるよう容器を改良することで,果実の損傷程度をより低減できる可能性が示唆された.