著者
太秦 康光 那須 淑子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.726-731,A49, 1963-09-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

温泉水中のルビジウム,セシウム含量とその分布を調べるため,主として北海道,青森県の温泉について炎光法によって定量を行なった。約80泉源のうち数例を除いてすべての温泉にルビジウム,セシウムはおのおの0.1~10mg/l,0.01~6.2mg/lの濃度範囲で広く分布しており,他のアルカリと同様対数正規分布をしている。一般にアルカリ含量の間にはNa>K>Li>Rb>Csの関係が認められた。ルビジウム,セシウムはナトリウムとは相関性はなく,Rb/Na,Cs/Naの値と泉質との間にも明らかな関係はない。他の天然水と比較すると,温泉水は,海水,油田塩水,河川水などよりこれらの成分に富んでいる。まにRb/Na,Cs/Naの値も海水,油田塩水よりは大きく,河川水や火成岩の値にやや近いことが明らかになった。しかし,これらの元素の温泉水中での行動は,他の微量成分たとえばリチウム,ストロンチウムなどほど特徴が見られない。