著者
太秦 康光 那須 義和 瀬尾 淑子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.413-418, 1960-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
12

温泉水中のストロンチウム含量とその分布を明らかにし, さらに温泉の化学成分の起源を考える上の資料とする目的で, 前報までに報告した北海道, 青森県の温泉 117 泉源について炎光法によりストロンチウムの定量を行なった。温泉中のストロンチウムは 0.05~27mg/l の広い範囲を示し, すべての温泉に普遍的に存在している。とくに, 青森県舞戸温泉の 27mg/l という値は, 本邦でいままでに見いだされた最高値である。Ca:400mg/l 以上のものあるいはそれ以下でもある特徴を持った温泉ではカルシウムとストロンチウムとの間に相関性があり, その他はカルシウムの量の変化によるストロンチウムの変化は少ない。Sr/Ca 比は n×10-3~10-2 で, 10-3 以下の値をとるものは少なく酸性泉がこの範中に入る。n×10-2 の値をとる温泉ではその泉質に明らかに特徴がみられる。また, カルシウム以外の主成分はストロンチウムと関連性はない。温泉中のストロンチウムはカルシウムとともに岩石, 石灰岩から供給されていると考えられ, 温泉の化学成分の起源について考察する際に Sr/Ca 比は非常に有力な手段となると考えるに至った。