著者
碇 直樹 松山 悟 下西 智徳 那須 賢司 大田 準二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1095-1098, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は62歳,男性.2007年1月27日(土)心窩部痛,右下腹部痛を主訴に夜間外来を受診した.30年前虫垂炎の診断で開腹されたがドレナージのみで治療され未切除だった.血液検査で炎症所見を認め,US施行されたが診断は困難であったため,CTを施行し当直医は急性腸炎と診断し外来で抗菌薬加療を開始した.翌日,圧痛を右季肋部に認めた.翌々日,症状及び炎症所見は改善傾向であったが,放射線科医によるCT再読影で,盲腸の頭側偏位と腫大した虫垂,糞石を認め,移動盲腸を伴う急性虫垂炎と診断された.虫垂根部の処理を考え右上腹部傍腹直筋切開で開腹すると盲腸・上行結腸周囲は右側腹部,右上腹部で強固に癒着しており,これを剥離し盲腸壁の一部を含め虫垂を切除した.移動盲腸は稀ではなく,急性腹症の診断においては念頭に置く必要がある.今回,CTで移動盲腸に伴う急性虫垂炎と診断し,適切な皮膚切開での病変切除が可能であった.