著者
大塚 隆生 中川内 章 下西 智徳 古賀 清和 岡崎 幸生 中房 祐司 宮崎 耕治
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.1520-1524, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は69歳の男性で, 間歇性腹痛と新鮮血下血を来し, 近医で行った腹部CTで上腸間膜動脈閉塞症と診断され, 当科を紹介された. 心電図上心房細動を認めた. 血液検査で白血球とLDHの上昇, 血液ガス分析でアシドーシスを認め, 腸管壊死が疑われたため開腹手術を行った. 小腸は広範囲にわたり色調が変化し, 辺縁動脈の拍動も減弱していたが, 壊死所見はなかった. そこで, 術中血管造影検査を行ったところ, 上腸間膜動脈に空腸第1枝より末梢レベルでの閉塞を認めたため, 動脈壁を切開し, 血栓除去術を行った. その後, 小腸の色調は速やかに回復し, 辺縁動脈の拍動も良好となった. 造影CTでも上腸間膜動脈の血流は良好であった. 上腸間膜動脈閉塞症による腸管壊死の診断で開腹したが, 可逆的腸管虚血を疑い, 術中血管造影検査が部位診断と治療方針の決定に有用であった1例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する.
著者
碇 直樹 松山 悟 下西 智徳 那須 賢司 大田 準二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.1095-1098, 2009 (Released:2009-10-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は62歳,男性.2007年1月27日(土)心窩部痛,右下腹部痛を主訴に夜間外来を受診した.30年前虫垂炎の診断で開腹されたがドレナージのみで治療され未切除だった.血液検査で炎症所見を認め,US施行されたが診断は困難であったため,CTを施行し当直医は急性腸炎と診断し外来で抗菌薬加療を開始した.翌日,圧痛を右季肋部に認めた.翌々日,症状及び炎症所見は改善傾向であったが,放射線科医によるCT再読影で,盲腸の頭側偏位と腫大した虫垂,糞石を認め,移動盲腸を伴う急性虫垂炎と診断された.虫垂根部の処理を考え右上腹部傍腹直筋切開で開腹すると盲腸・上行結腸周囲は右側腹部,右上腹部で強固に癒着しており,これを剥離し盲腸壁の一部を含め虫垂を切除した.移動盲腸は稀ではなく,急性腹症の診断においては念頭に置く必要がある.今回,CTで移動盲腸に伴う急性虫垂炎と診断し,適切な皮膚切開での病変切除が可能であった.