著者
都丸 雅敏
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

精子間競争は性淘汰において重要と考えられている。体内受精を行う動物では、精子が運動能を維持しながら雌体内に一定期間留まり(貯精)、精子間競争に大きく関わると考えられる。また、ショウジョウバエでは、貯精は、雌の再交尾を抑制し、はじめに交尾した雄の精子が他の個体との精子間競争を避けるように働く。そこで、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて、貯精器官の数に変異のある系統や貯精に異常のある雄不妊突然変異ms(3)236を用い、精子間競争における貯精の影響を明らかにすることにした。精子間競争:ショウジョウバエの雌には貯精器官が2種類(管状受精嚢および2個1組の受精嚢)あるが、当研究室では受精嚢が3個あるショウジョウバエ系統が選抜され維持されている。受精嚢が3個あるショウジョウバエ系統を雌として、精子の尾部が蛍光を発する改変遺伝子(di-GFP)を導入したms(3)236雄と持たない野生型の雄と順に(または、逆順に)交配し、第1回目と第2回目のどちらの交配による子であるかを判定した。その結果、受精嚢の数と精子間競争の間には明確な相関は見られなかった。ms(3)236の遺伝学的解析:昨年度の解析により、ms(3)236は第3染色体の右腕95Fの領域の31.3kbの範囲に位置づけられた。そこで、この領域の一部を欠失する染色体を持つ系統を利用して欠失マッピングを行ったところ、ms(3)236は23.9kbの範囲に位置づけられた。次に、23.9kbの範囲にある2つの遺伝子(CG6364またはCG13610)に挿入したP因子を再転移させ、系統を確立したが、ms(3)236突然変異を相補しない系統を得ることはできなかった。したがって、ms(3)236はCG6364およびCG13610ではない可能性が高いと考えられた。