著者
都築 光一
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
no.43, pp.1-18, 2019-03-20

地域福祉の推進に当たっては, 住民主体が基本ということは,自明のこととされている。にもかかわらず行政の施策や社会福祉関係機関の取り組みの基本姿勢として,あらためて住民主体の必要性をとなえる文書が見受けられる。しかしそこで言われている住民主体については内実が不明な内容が少なくない。そこで関係資料等を基に住民主体の構成要素を操作的に定義し,「明確な地域福祉活動に関する推進意識を共有できている地域ほど,地域福祉活動が活発である」という仮説を設定し,これを検証するために質的調査を実施した。 各地区でのインタビューを行い仮説を検証したところ,一部支持された。その結果①活動を実践する組織の単位 ②活動を展開するうえで,実践目標を共有できる単位 ③活動を展開する住民の「自分たちの地域」を共有できる単位 ④活動や行事等について協議決定できる単位 の4条件について,地域を構成する要素として,明確に圏域を区分する要素となっていたことが確認された。今回の調査で確認するまでも無く,地域という場合には,居住している住民にとって意味を共有できる範域において初めて言えることである。したがって地域福祉を考え実践する場合においては,地域住民にとって意味を共有することができ,住民主体で実践できることを前提とするものでなければならないと言えよう。