著者
鄭 栄鎭
出版者
大阪市立大学
雑誌
人権問題研究 (ISSN:1346454X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.127-145, 2013

1. はじめに : 本論が題材とするのは、鄭大均(てい・たいきん)と鄭香均(チヨン・ヒャンギュン)である。後述するが、大学教員の鄭大均は日本国籍取得論を積極的に展開する在日朝鮮人であり、一方の鄭香均は、外国籍を理由とした拒否にあい、外国籍を維持しつつ訴訟を起こした在日朝鮮人である。そして、この二人はきょうだいでもある。1970年代以降、公営住宅入居、児童手当支給、公務員採用試験の国籍条項撤廃運動などの在日朝鮮人の権利獲得運動が行われた。日本人とともに行われたこれらの運動は、在日朝鮮人が韓国籍、朝鮮籍を維持しつつ、日本国籍者と同等の権利の獲得を志向していた。鄭大均は、これら在日朝鮮人運動の中でも、特に国籍条項撤廃運動、地方参政権獲得運動を批判する。……