著者
堤 利夫 酒井 正治
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.60-66, 1984-11-30

京都大学芦生演習林の天然生落葉広葉樹林で, 斜面上部のB_B型土壌と斜面下部のB_D型土壌の2つのプロットの細根の量と垂直分布をしらベた。B_BのプロットではB_Dのそれに比し, 乾性種が多く小径で立木本数が多い林分である。両プロットで立木間に設けた1m_2の方形枠について, 表層から10cmごとに掘りとって測定した結果, B_Dのプロットの根量は10. 25t/ha, B_Bプロットで15. 65t/haでB_Bプロットの方が根量が多かった。これらの根を径2mm以下, 2 - 5mm, 5 - 20mmに区分すると, B_Dプロットで径5 - 20mmが比較的に多く, B_Bでは逆に径2mm以下が多い傾向があった。根は地表に多く集中し, 下層に向って減少するが, B_Bプロットの方が変化が急であって, 70cm以深にはみられなかった。B_Dプロットでは径5 - 20mmの根が深さにともなってほとんど変化せず, このことが全量の減少速度を小さくしていた。径5mm以下の細根の地表からの減少速度は2つのプロットで明らかな差はなかった。細根は両プロットとも地表に集中し, 20cm深までに全細根量の65-77%を含む。その量はB_Bプロットでとくに多く, F・H層, A層が物質循環の主な場であることを示唆した。