著者
酒井 雄祐
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

水素様窒素の再結合レーザー発振に要求される高速放電パルスを得るための放電部開発を進めた。水コンデンサ後方に,低インダクタンスな自爆型のギャップスイッチ,伝送線路とキャピラリー負荷部を組み合わせるシステムを考案し,より整合のとれた放電部の開発を行った。そして,波高値にして約3倍程度,またパルス幅とし50ns程度のパルス発生を可能とした。また,この装置の特徴として,伝送線路の線路長を変化させることである程度の電流波形制御が可能となった。結果として,75mmのキャピラリーに,電流ピーク値として65kA以上で,パルス幅が50ns〜80ns程度のパルス電流の生成に成功した。並行して,最適な実験条件を探るため,イオンの状態を知るための電磁流体(MHD)シュミレーションコードと,放電部のパルス形成のためのコードの開発を進めた。そして,実験装置で形成可能な電流波形を基に,作成したMHDコードによる計算を行い,水素様窒素の再結合励起に滴する電流波形の形成を試みた。計算結果として,ピーク値50kA,立ち上がり25ns,立ち下がり25ns程度の三角波電流を用いた場合,最大ピンチ時に150eV,電子数密度として1×10^<20>cm^<-3>程度までプラズマが圧縮され,その後10ns程度で数十eVにまで急峻に冷却きれた。そして,ピンチ後数ns後に,全窒素イオンの20%程度が7価まで電離し,小利得信号としてG=1cm^<-1>が得られた。最終的に,実際に開発したパルスパワーシステムにより,三角波電流の生成を行った。そして,実際に放電を行い,窒素プラズマからの放射光の計測を進めた。現在までに,XRDにより波長3nm以下の放射光の時間変化の計測を行った結果,数nsに渡り強い信号を観測し,最大ピンチ時付近における,水素様窒素の存在を確認し,再結合レーザー発振の可能性を示した。