著者
村松 慶一 重冨 充則 田口 敏彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

四肢移植は、移植片が抗原性の強い骨髄や皮膚を含んだ複合体であり内臓器移植よりも生着が困難である。加えて、非生命維持器官であるため免疫抑制剤の長期投与はその重篤な副作用の発現を考えると許されるものではない。本実験の目的は、他人からの手、足(四肢)同種移植に対する免疫学的寛容を獲得することである。実験動物はドナーとしてGFPラット(outbred Wistar)とLacZラット(inbred DA)を用い、レシピエントとしてLewisラット(MHC expression, RT1^1)を用いた。実験モデルは、四肢移植はこれまで私達が用いてきた右後肢同所性移植モデルを(1997,1999)を用いた。四肢移植モデルについて、皮膚は下腿中央部で円周上に切開、その他の構成部は大腿骨中央部で切断する。recipientに作成した同様の右後肢欠損部に移植片を挿入、大腿骨はキルシュナー鋼線で固定、坐骨神経、大腿動静脈を手術用顕微鏡で神経血管吻合、筋肉、皮膚を縫合する。免疫抑制剤はFK506(Prograf)を使用し、その投与量は1mg/kg/dayとした。移植四肢の評価法は、1)拒絶判定;移植肢の拒絶判定は、四肢移植では皮膚拒絶が肉眼的に判断された腫脹を伴う発赤が24時間継続した時点、その他の移植は組織学的に判断する。2)軟x線撮影;移植肢は1週間おきに軟x線撮影を行い、新生骨の形成、骨癒合を観察する。4)組織所見;HE染色を各構成体に行い、拒絶の評価を行う。評価の段階には我々が報告したrejection grading scaleを用い(1998,2000)、統計学的処理を行い各群間の有意差を判定した。キメリズムの評価は、移植後、1,6,12,24,48週に屠殺し胸腺、骨髄、肝臓、脾臓、リンパ節、血液など各リンパ器官を採取し、ドナーであるGreen Fluorescent Protein-Transgenic Rat細胞またはLacZRat細胞の遊走について観察した。