著者
野原 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.2625-2637, 2017-12-10 (Released:2018-12-10)
参考文献数
31

家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)ヘテロ接合体は一般人200~300人に1人と,以前の想定よりも頻度の高い常染色体優性遺伝疾患であることがわかってきた.FHは早発性冠動脈硬化症による若年死リスクが高い疾患だが,早期診断・早期治療が極めて有効であり,積極的な診断を家族の治療にもつなぎ,診断率を向上することが非常に大切である.これまでの既存薬ではFHの治療は不十分であった.2003年に3番目のFH遺伝子としてPCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)が発見され,2016年に承認されたPCSK9阻害薬(前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型阻害薬)はFHヘテロ接合体でもLDLコレステロール(low density lipoprotein-cholesterol:LDL-C)を十分に低下させることができる.また,有効な薬物が少ない重症型のFHホモ接合体にはMTP(microsomal triglyceride transfer protein)阻害薬が2016年に承認された.これらの薬剤の登場がFHの心血管疾患治療を大きく前進させている.
著者
野原 淳 小林 淳二 稲津 明広 八木 邦公 野口 徹
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールよりもHDLの組成変化が冠動脈疾患発症に係わる可能性がある.本研究はHDL組成異常としてHDLトリグリセライド(TG)/HDLリン脂質(PL)比の上昇が種々の動脈硬化リスクと有意の相関が見られることを明らかにした. 同比率は特に糖尿病や慢性腎疾患との相関が強くHDL機能低下と関連する可能性がある.本邦ではコレステリルエステル転送蛋白(CETP)欠損症が高頻度であるが,血中CETP蛋白量はHDL-TG/PLと正相関を示し,CETP欠損症ではHDL-TG/PL比は有意に低値であった.
著者
小林 淳二 野原 淳
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脂質代謝を制御する酵素であるLPLとHTGLの活性を測定する簡便な系を確立し、その臨床意義を検討した。LPL活性はTG、RLP-TG,sdLDLと逆相関、HDL-Cと正相関したしたが、ANGPTL3と相関なし。一方、HTGL活性はTG、RLP-TG、sdLDLと相関せず、HDL-C、ANGPTL3と逆相関した。ANGPTL3によるHTGL活性抑制は見られなかった。以上から、ANGPTL3とHTGL両者の上流にそれらの制御にかかわる因子が存在し、それぞれを逆方向に制御する可能性が示唆された。