著者
野原 真理 宮城 重二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.849-862, 2009

<b>目的</b>&emsp;本研究では,妊産婦に対する親族サポートの実態を確認し,妊産婦の QOL と親族サポートとの関連性を明らかにする。<br/><b>方法</b>&emsp;都心にある病院産科の母親学級に参加した妊婦362人を対象に自己記入式質問紙を配布し,妊娠後期・生後 1 か月・生後 6 か月(以下妊娠育児 3 時期)に郵送法にて調査した。有効回答を得た151人を解析した。調査内容は,属性,親族サポート,育児,健康状態,QOL である。QOL に関してはオリジナルスケールを使用した。分析方法としては,特に QOL 等の要因分析については,パスモデルによる重回帰分析を行った。<br/><b>結果</b>&emsp;1) 夫のサポートは妊娠育児 3 時期を通して徐々に高まり,親のサポートは生後 1 か月で最も高かった。しかも,親族サポートが夫や親の協働の中で進められていた。<br/>&emsp;2) 親族サポートを 4 類型化し,タイプI(夫・親とも高得点群)の割合は妊娠後期より出産後に増え,逆に,タイプIV(夫・親とも低得点群)は減る。しかも,タイプIではタイプIVに比べて,妊娠育児 3 時期において,育児要因,健康状態,QOL の平均得点が高かった。<br/>&emsp;3) QOL のオリジナルスケールは因子分析をした結果,第 1 因子(心理ポジティブ因子),第 2 因子(物的生活因子),第 3 因子(日常生活因子)が抽出・命名された。<br/>&emsp;4) QOL の 3 因子に対する要因分析の結果,心理ポジティブ因子では,妊娠育児 3 時期を通して,夫サポートが,物的生活因子では,妊娠後期,生後一か月で夫サポートが,日常生活因子では,生後 6 か月に夫サポートが強い影響要因となる。<br/><b>結論</b>&emsp;妊産婦への親族サポートの存在とその意義が実証され,しかも,親族サポートと妊産婦の QOL との関わりが確認された。良好な親族サポートが維持されれば,妊産婦の育児,健康状態,QOL も良好であることが示された。