著者
真鍋 真 藪本 美孝 野呂 美幸
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)桑島層から発見された胴体が伸長した小型爬虫類を新属新種のドリコサウルス類Kaganaias hakusanensisとして英国古生物学会誌に記載した。同種はドリコサウルス類の系統では最も基盤的な種に位置づけられる系統仮説が有力であり、産出時代もこれまでで最も古い。ドリコサウルス類としてはヨーロッパ以外での存在が初めて報告であり、同類として海成層以外からの発見も初めてとなった。ドリコサウルス類はモササウルス類(海トカゲ竜)の姉妹群にあたるトカゲ類で、これまでは白亜紀中頃から後期のヨーロッパの海でしか発見されていなかったため、モササウルス類などの多様で高度な海棲適応の場が白亜紀中頃のヨーロッパの海と考えられていた。また、一部の系統仮説では、ドリコサウルス類が、ヘビ類、さらにモササウルス類に近縁であることから、ヘビの四肢の退化が海生適応だったとする説があった。カガナイアスの存在は、以上の様な適応仮説に再考を求めるものとなった。(2)トカゲ6種について四肢の発生に関してステージングを行ったところ、あるトカゲの胚は産卵直後にニワトリ胚ステージ12前後に相当する発生状態にあり、その後ニワトリ胚の3倍以上の時問をかけて四肢発生が進む可能性が明らかになった。(3)桑島層のパキコルムス科魚類は、後期ジュラ紀のゾルンフォーフェンから産出している種に類似している。桑島層のアロワナ科魚類化石は本科の最も古い記録である。恐竜などの爬虫類、単弓類で見られたように、桑島層にはジュラ紀型と白亜紀型の魚類が共存していたことが明らかになった。これは白亜紀前期のアジアがヨーロッパと北米と海で隔てられたことによって、アジアでは他地域と異なる生態系進化があったことの証拠かもしれないが、他地域の小型脊椎動物化石相の理解が不十分であることに過ぎないかもしれない。