著者
国中 優治 野尻 圭吾 谷口 忍
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.G3P2579-G3P2579, 2009

【はじめに】近年、理学療法士養成校の乱立や医療情勢の厳しさによって、理学療法士の将来的保障に不安のよぎる時代となりつつある.そこで、職域拡大による新たなフィールドの確保が急務と感じている.よって今回、美容・健康業界に着目し、理学療法士の自由市場参入の可能性について施設のマネジメントを通して得られた見解を述べる.<BR>【方法】整形外科と美容外科を標榜する施設(同施設内に美容形成及びエステ、スパを併設)において、保険診療として在籍する理学療法士(4名)の空き時間を利用し、以下の自由市場サービスを携わらせた.1,施設に在籍するエステティシャンに対し、施術時に必要な顔面の解剖学指導、また、その効果に対する医学的根拠の説明を行った.内容はフェイシャルアプローチ(通電によるリフトアップ効果)である.2,会員制のスパ施設におけるアクアエクササイズメニューの内、週4回スポット的に携わらせた.3,快眠へのアプローチとして、機能的枕(頚椎形状にあわせたオリジナル枕)をクライアントに紹介し、その販売に携わらせた.医療法人における業務規制に関しては、株式会社、および42条施設取得によりクリアした上で起用した.<BR>【結果及び考察】1,エステティシャンのクライアントに対する説明能力が向上し、売り上げやリピーターの増加に貢献できた.2,専従で在籍するインストラクターのクライアントリスク及び情報管理に対する意識が高まった.また、エクササイズにおける物理・運動療法的な効果理論が共有でき、理学療法を併用する対象者の理想的な運動効果が得られた.さらに、診断日より150日経過した患者の会員への移行によって、医学、経済的においてフォローができた.3,導入当初、販売個数が得られなかったが、意識改革と、提供の仕組み作りによって、販売個数が伸びた.今回の取り組みにおいて、アプローチの方法が我々に比較的類似するスパへの関わりにおいては予想した結果が得られたが、物販や美容といった異業種においては満足のいく結果は得られなかった.特にエステティシャンなど、自由市場をフィールドに持つ職種との差異が大きく感じられ、PTの対価意識の甘さが垣間見えた.保険診療環境下におけるその甘さが責任と質の向上(特に満足度獲得に関して)に影響していることを認識させられた.<BR>【最後に】職域拡大には、まだまだフィールドの確保が困難(環境側面、人的側面、経済的側面)であるという課題も残るが、自由市場におけるニーズ(正しいもの、本物に医学的判断が必須となる時代)は間違いなく大きいと確信する.そのためには理学療法の自由市場における落とし込み方法(仕組み、接客、センス、販促、デザインなど)のマネジメントがこれからの課題となるのではないか.美容業界や健康業界も医学的知識を習得する努力がすでに始まっている.職域拡大を目指す我々に時間があるわけではない.