著者
小倉 憂也 小澤 智子 野島 康弘 菊野 理津子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.391-398, 2015 (Released:2016-01-26)
参考文献数
25
被引用文献数
4 2

本研究では,ペルオキソ一硫酸水素カリウムを主成分とする環境除菌・洗浄剤(RST)の有効性について,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),多剤耐性緑膿菌(MDRP),ノロウイルス代替のネコカリシウイルス(FCV)およびC型肝炎ウイルス代替のウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)を対象として評価した.懸濁試験において,1%RSTは,0.03%ウシ血清アルブミンを負荷物質とした試験条件では1分間の作用時間で,MRSA,MDRPに対して4 log10以上の殺菌効果を示し,またFCVに対し4 log10以上のウイルス不活化効果を示した.1分間作用の懸濁試験による評価において有効塩素濃度が同じ次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)よりもRSTはウイルス不活化効果が高かった.浸漬試験においてはキャリアに付着させたBVDVに対して0.1%NaOClは0.9 log10の,また1%RSTでは3.3 log10の減少であった.また,試験薬含浸ワイプによる拭き取り試験では,1%RST含浸ワイプは,FCVに対し4.5 log10以上の除去効果を示した.これらの結果からRSTは,病院環境における日常の衛生管理において,選択肢の一つになり得る製剤であることが示唆された.