著者
野村 在
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
武蔵野美術大学大学院博士後期課程研究紀要
巻号頁・発行日
no.5, pp.21-39, 2012-03-31

本論は、エヴァ・ヘスの彫刻作品について最初に論じられたルーシー・リパードによる『エキセントリック・アブストラクション』(1966)の考察および、そこに含まれる作品と鑑賞者に介在する関係性を論じたものである。 ヘス作品について、アメリカでは90 年代以降現在にいたるまで継続的に議論が再燃しているが、これらは60 年代当時<ポストミニマリズム>や<フェミニズム>といったクリシェにより、作品の本質が覆い隠されていたことに要因があるのではないか。本論では、ヘス作品の歴史的な背景や評価、そして現在にいたるまでの様々な批評を取り上げながら、作品の本質を見いだしていく事で、作品と鑑賞者における<形態と身体>への相互作用を考察する。