著者
小澤 啓
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
武蔵野美術大学大学院博士後期課程研究紀要
巻号頁・発行日
no.6, pp.5-22, 2013-03-31

本論文では、人々が熊野に神秘的イメージを抱く背景に、いかなる自然的要素・条件が深く関わっているかを考察する。広島県庄原市西城町の熊野神社、鳥取県鳥取市佐治町の熊野神社遺跡、京都府京都市内にある熊野若王子神社、新熊野神社、京都熊野神社では、紀州熊野から自然物が持ち込まれたり、現地の滝を紀州熊野にある那智の滝に見立てるなど、様々な見立ての実例がみられる。 本論文では、これら広島・鳥取・京都の霊場にみられる見立てを具体的に検証していく。その結果、いかなる自然物が人々に注目され、活用されてきたのかを確認することができる。これらの地域においては、滝や樹木、岩石などの自然物が紀州熊野に見立てられる例が多くみられ、これらが神秘的イメージをもたらす媒体として捉えられてきた様子を確認することができる。
著者
白石 美雪
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

4年にわたる研究の第2年度として、2017年度は初年度に続いて、7名の音楽評論家(福地桜痴、成島柳北、伊沢修二、大田黒元雄、山根銀二、吉田秀和、遠山一行)の業績調査を行い、「職業としての音楽家」がどのようにして養成されたかに関わる典型例を確認する作業を行っている。大学における音楽学の教育制度が整う以前、海外の著作を翻訳したり、楽譜やレコードの収集を行った教養人、大学での文学・美学研究を通じて養成された、美術も音楽も文学同様に論述の対象とする評論家、そして音楽学の教育制度の成立以後、音楽研究者としての教養をもつ音楽学者では、評論の手法と表現方法が大きく異なっていることが確認されつつある。さらに1936(昭和11)年に文部省が設置した日本諸学振興委員会に関する先行研究を調査し、東洋音楽学会が成立したプロセスを確認した。その一方で、音楽評論そのものの成立についての調査もあらためて行った。明治中期から後期にかけて、とくに明治31年の読売新聞以前の新聞で音楽評論と認めることのできる記事がどの程度、掲載されているかを調べ、また、初期の音楽雑誌における批評的文章の掲載についても調査を行った。また、初年度に続いて、主要新聞における「楽壇」の用例調査を進めた。集団としての音楽論壇、とりわけ「職業としての音楽評論家」について明確化するため、2017年度の新たな課題として計画していた近代日本主要音楽評論家一覧(データベース)の作成にも着手したところである。
著者
玉蟲 敏子 相澤 正彦 大久保 純一 田島 達也 並木 誠士 黒田 泰三 五十嵐 公一 井田 太郎 成澤 勝嗣 野口 剛 畑 靖紀 吉田 恵理
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

朝岡興禎編『古画備考』原本(1850-51年成立、東京藝術大学附属図書館)に集成された書画に関する視覚・文字情報の分析によって初めて、自身の見聞や親しい人脈から提供された第一次情報に基づく出身の江戸狩野家、同時代の関東や江戸の諸派は詳細である一方、上方については一部の出版物に頼り、浮世絵も最新の成果が盛り込まれていないなどの偏向性が確認され、朝岡の鷹揚なアカデミズムの視点から、近代における美術史学成立直前の都市・江戸で開花した書画趣味の実態、価値観、情報の伝達経路を浮上させることに成功した。
著者
杉浦 幸子 三澤 一実 米徳 信一 山口 真美
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

「超初期学習者」である乳幼児の心理的発達に、「美術館」環境、「アート作品」、それらに関わる「人」が寄与すると仮定し、それらが発する情報を乳幼児が取得する教育プログラムをデザイン・実施し、彼らの反応を映像記録し、保護者、主催者から聞き取りを行った。その結果、主に次の3点が観察できた。乳幼児は、1.色や線、形といった造形要素、照明、床、家具といった建築的要素、周囲の人的刺激に反応する、2.反応に個人差がある、3.過去の経験や記憶と受けた刺激を関連づけている可能性があるそこから、「美術館」は乳幼児の心理的発達に寄与する可能性があるとし、成果を印刷物にまとめ、国内の美術館、自治体に配布・共有した。
著者
高山 穣
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究ではまず、装飾文様を手続的なアプローチによって生成することを試みた。具体的に再現するモチーフとして、メダリオンという文様を取り上げた。メダリオンは西洋のあらゆる装飾でポピュラーなモチーフであることから、汎用性が高いと考えられる。その際、二次元のメタボールを利用し、様々な回転対称の文様を自動生成するアルゴリズムを考案した。そこから得られる二次元の文様を高度マップとしてみなして利用し、高さ情報を持つ立体形状へと変換した。最終的に得られた形状は高解像度の3Dプリンタを用いて出力を行った。完成したレリーフ装飾は複数の美術展で展示を行い、一定の評価を得ることができた。