著者
小澤 啓
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
武蔵野美術大学大学院博士後期課程研究紀要
巻号頁・発行日
no.6, pp.5-22, 2013-03-31

本論文では、人々が熊野に神秘的イメージを抱く背景に、いかなる自然的要素・条件が深く関わっているかを考察する。広島県庄原市西城町の熊野神社、鳥取県鳥取市佐治町の熊野神社遺跡、京都府京都市内にある熊野若王子神社、新熊野神社、京都熊野神社では、紀州熊野から自然物が持ち込まれたり、現地の滝を紀州熊野にある那智の滝に見立てるなど、様々な見立ての実例がみられる。 本論文では、これら広島・鳥取・京都の霊場にみられる見立てを具体的に検証していく。その結果、いかなる自然物が人々に注目され、活用されてきたのかを確認することができる。これらの地域においては、滝や樹木、岩石などの自然物が紀州熊野に見立てられる例が多くみられ、これらが神秘的イメージをもたらす媒体として捉えられてきた様子を確認することができる。
著者
野村 在
出版者
武蔵野美術大学
雑誌
武蔵野美術大学大学院博士後期課程研究紀要
巻号頁・発行日
no.5, pp.21-39, 2012-03-31

本論は、エヴァ・ヘスの彫刻作品について最初に論じられたルーシー・リパードによる『エキセントリック・アブストラクション』(1966)の考察および、そこに含まれる作品と鑑賞者に介在する関係性を論じたものである。 ヘス作品について、アメリカでは90 年代以降現在にいたるまで継続的に議論が再燃しているが、これらは60 年代当時<ポストミニマリズム>や<フェミニズム>といったクリシェにより、作品の本質が覆い隠されていたことに要因があるのではないか。本論では、ヘス作品の歴史的な背景や評価、そして現在にいたるまでの様々な批評を取り上げながら、作品の本質を見いだしていく事で、作品と鑑賞者における<形態と身体>への相互作用を考察する。