著者
和田 俊和 野村 圭弘 松山 隆司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.879-891, 1995-04-15
参考文献数
11
被引用文献数
15

画像の領域分割問題は、明度、色、テクスチャの統計的性質、境界のエッジ強度の極大性など各領域の「属性」に関する性質と、それらが互いに素であり、画像全体を被覆するという領域間の「関係」に関する性質を同時に満足する領域集合を求める問題である。このように、部分の属性と部分間の関係の両者を取り扱わなければならない問題に対しては、各部分を自律的に動作するプロセス(エージェント)によって表現し、それらの相互作用によって解析を行う分散協調処理が適している。本研究では、領域の属性情報と領域間の空間的関係情報の両者を分散協調処理を用いて統合する領域分割法を提案する。本手法では、まず画像中の領域を表す各エージェントが他のエージェントの位置・形状を参照することにより、領域間の関係、すなわち領域の境界位置に関する仮説を生成する。各エージェントは、生成した仮説とボトムアップ解析によって得た領域固有の属性情報を、スネークのエネルギー関数を通じて統合し、エネルギー関数の最適化によって領域形状の変形を行う。さらに、エージェント間で互いに矛盾する仮説が生成された場合、各エージェントは仮説を修正することによって矛盾の解消を行う。以上のように「仮説の生成」、「矛盾する仮説の検証と修正」という機能を持つ分散協調システムによって整合性のある領域分割が行えることを実験によって示す。