著者
深江 敬志 望月 正光 野村 容康
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.123-141, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
27

本稿の目的は,わが国申告所得税の再分配効果を所得者別・所得階層別の要因分解により検証することである。所得階層別の分析においては,所得税の再分配効果を税率効果と控除効果に分解し,その相対的な大きさを定量的に把握する。 分析の結果,以下の諸点が明らかになった。 第1に,申告所得税全体の再分配効果は,給与所得者・譲渡所得者などを含む「その他所得者」のグループ内の効果によってその大部分が説明される。 第2に,経年的に見た再分配係数は,昭和38年以降全般的に低下傾向を示す中で,① 昭和44年~昭和50年と昭和62年~平成3年に急激に低下し(ボトム効果),② 平成11年に急上昇する(ジャンピング効果)。 第3に,これら両効果の要因について,① ボトム効果が特に高所得階層(上)の税率効果に強く依存するのに対し,② ジャンピング効果は,当該年度に控除効果が急上昇している点から,主に定率減税の実施に起因すると考えられる。