著者
望月 正光
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.254, pp.96-105, 2013-01

本稿の目的は,グローバル社会における付加価値税の新しい潮流として,課税の効率性と公正性を備えたニューVATに焦点を当てることである。これまで付加価値税の標準モデルとしてEUモデルが考えられてきた。しかし,1993年のEU成立と同時に,EU域内取引が自由化されたことによって,加盟国の付加価値税制度の相違点(例えば,複数税率や非課税制度等)による問題がより顕在化するようになってきた。このため,EUモデルは, オールドVATとして制度改革が不可避となっている。これに対して,グローバル社会における付加価値税の新しい潮流として,効率性と公正性を備えたニューVATが注目されており,その代表が,ニュージランドモデルである。その基本的な考え方は,複数税率や非課税制度を廃止し,「単一の標準税率構造と広い課税ベース」とするシンプルなものである。このような考え方に基づくニューVATが,オールドVATの直面している問題の多くを改善することを明らかにする。
著者
深江 敬志 望月 正光 野村 容康
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.123-141, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
27

本稿の目的は,わが国申告所得税の再分配効果を所得者別・所得階層別の要因分解により検証することである。所得階層別の分析においては,所得税の再分配効果を税率効果と控除効果に分解し,その相対的な大きさを定量的に把握する。 分析の結果,以下の諸点が明らかになった。 第1に,申告所得税全体の再分配効果は,給与所得者・譲渡所得者などを含む「その他所得者」のグループ内の効果によってその大部分が説明される。 第2に,経年的に見た再分配係数は,昭和38年以降全般的に低下傾向を示す中で,① 昭和44年~昭和50年と昭和62年~平成3年に急激に低下し(ボトム効果),② 平成11年に急上昇する(ジャンピング効果)。 第3に,これら両効果の要因について,① ボトム効果が特に高所得階層(上)の税率効果に強く依存するのに対し,② ジャンピング効果は,当該年度に控除効果が急上昇している点から,主に定率減税の実施に起因すると考えられる。
著者
望月 正光
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.254,

本稿の目的は,グローバル社会における付加価値税の新しい潮流として,課税の効率性と公正性を備えたニューVATに焦点を当てることである。これまで付加価値税の標準モデルとしてEUモデルが考えられてきた。しかし,1993年のEU成立と同時に,EU域内取引が自由化されたことによって,加盟国の付加価値税制度の相違点(例えば,複数税率や非課税制度等)による問題がより顕在化するようになってきた。このため,EUモデルは, オールドVATとして制度改革が不可避となっている。これに対して,グローバル社会における付加価値税の新しい潮流として,効率性と公正性を備えたニューVATが注目されており,その代表が,ニュージランドモデルである。その基本的な考え方は,複数税率や非課税制度を廃止し,「単一の標準税率構造と広い課税ベース」とするシンプルなものである。このような考え方に基づくニューVATが,オールドVATの直面している問題の多くを改善することを明らかにする。
著者
望月 正光 堀場 勇夫
出版者
関東学院大学経済研究所
雑誌
経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.244, pp.27-44,

要旨本研究の目的は,わが国における地方消費税のマクロ税収配分を各都道府県の産業連関表等を用いることによって,仕向地原則に基づく地方消費税の税収配分のあるべき姿を把握するため,マクロデータによってシミュレーションを行うことにある。消費型付加価値税の配分を,最も精緻なマクロ税収配分方式によって,マクロ統計に基づいて実施しているのがカナダの協調売上税(HST;Harmonized Sales Tax )である。カナダで行われているマクロ税収配分方式に依拠した場合,わが国の地方消費税のマクロ税収配分がいかなる姿となるかを可能な限り正確にシミュレーションする。具体的には,わが国で公表されている国または各都道府県の『産業連関表』,または『県民経済計算』等のマクロ統計を利用することによってマクロ税収配分の推計を行う。その推計結果から,仕向地原則に則したわが国の地方消費税のマクロ税収配分の姿を明らかにする。本稿(その1)では,カナダのHST と比較しながら,わが国の地方消費税のマクロ税収配分方式の特徴について説明する。さらに地方消費税の課税標準額の推計方法を示し,地方消費税の実際の税収額をマクロ税収配分方式に基づいて各県に配分する方法を明らかにする。(以上,本集掲載)