著者
原 美由紀 橋本 美樹 本多 律子 野村 潤
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.29, pp.192, 2010

【目的】我々は「理学療法士の啓蒙と広報」「障害への理解」を目的に、平成19年度から小学生に対し車椅子体験授業を実施している。初年度は5年生を対象に理学療法士が主体となり、バリアフリーの利便性やマンパワーサポートの必要性を体感した。しかし体験後の児童の感想で「車椅子の人は何も出来ない、可哀そう」と偏見を持った児童もおり、障害理解や身近に障害を感じる事について課題が残った。そこで「障害について考える機会を作る」「共に生きていく仲間であることを学ぶきっかけを作る」という目的で、児童が6年生になる年に、実際に車椅子生活をされている方と触れ合い身近に障害を感じる手段として、楽しんで出来て我々のネットワークにより繋がりのある車椅子バスケを選択した。【方法】対象は栃木県那須塩原市立青木小学校の6年生23人。ツインバスケットボールチームの選手3人、理学療法士4人で行った。午後の授業2時限分使用し、車椅子バスケの練習後に選手と児童を交えたチームを作り試合をした。【結果】授業後の児童の感想文では「車椅子バスケは楽しかった(15人)」「また青木小に来てほしい(7人)」「車椅子バスケ体験が出来て良かった、勉強になった(5人)」と車椅子バスケや選手との交流を楽しんだ感想や「車椅子生活は大変、可哀そうだと思っていたがいろんな事が自分で出来る(9人)」と障害に対する印象が変化した感想が多かった。また「車椅子の人を見かけたら優しく声をかけようと思った(1人)」と障害者に対して距離が縮まったと思われる感想や「どこが悪いのか分からなかった(1人)」と選手が障害を持っている事を実感しない児童もいた。【考察】5年生の授業では初めての車椅子操作や介助が大変だった故、障害=不幸というマイナスの印象を持った児童もいたが、実際に障害者と触れ合い自身で出来る事も沢山あることを知り、障害を身近に感じるとともに印象が変化したと思われる。しかし、階段昇降以外は介助がいらず華麗にバスケ車を乗りこなす様を見て、障害像をイメージ出来ない児童もおり、障害理解に関しては5・6年生の授業を通して課題が残った。この点を考慮し、次回は給食を一緒に食べたり1日を通して車椅子バスケ以外の日常生活に触れ合うなど、理学療法士の専門性を活かし障害像をどのように児童に伝えていくか、授業内容の再検討が必要である。【まとめ】物事を柔軟に捉える事が出来る学童期に障害に関してのさまざまな刺激を与えることで、障害を身近に感じ偏見や誤った固定観念を持つことなく障害者と接することが出来ると考える。そのために、我々理学療法士が専門性やネットワークを活かし媒体となっていく意義はあると考える。