著者
井出 浩希 工藤 浩 杉森 一仁 松原 美由紀
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.1267-1271, 2015 (Released:2015-12-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

【目的】大腿骨近位部骨折術後患者において、入院期間中の摂食嚥下機能の低下に影響を及ぼす因子を検討することを目的とした。【対象及び方法】当院にて大腿骨近位部骨折に対し手術を施行した26例を対象とした。摂食嚥下機能は入院期間中の食形態を指標とし、食形態が変化しなかった群 (A群) と、食形態の調整または水分にトロミが必要となった群 (B群) について検討した。【結果】A群に比べ B群は入院時 CRP値 (p=0.04) 、施設からの入院割合 (p=0.03) が有意に高かった。入院時血清アルブミン (Alb) 値、入院時 Body Mass Index (BMI) には統計学的有意差を認めなかったが (いずれも p=0.08) 、B群で低い傾向がみられた。【結論】施設からの入院例、炎症を認める症例、入院時 Alb、BMIが低値で低栄養が疑われる症例は、入院期間中に摂食嚥下機能が低下しやすく注意が必要であると考える。
著者
原 美由紀 橋本 美樹 本多 律子 野村 潤
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.29, pp.192, 2010

【目的】我々は「理学療法士の啓蒙と広報」「障害への理解」を目的に、平成19年度から小学生に対し車椅子体験授業を実施している。初年度は5年生を対象に理学療法士が主体となり、バリアフリーの利便性やマンパワーサポートの必要性を体感した。しかし体験後の児童の感想で「車椅子の人は何も出来ない、可哀そう」と偏見を持った児童もおり、障害理解や身近に障害を感じる事について課題が残った。そこで「障害について考える機会を作る」「共に生きていく仲間であることを学ぶきっかけを作る」という目的で、児童が6年生になる年に、実際に車椅子生活をされている方と触れ合い身近に障害を感じる手段として、楽しんで出来て我々のネットワークにより繋がりのある車椅子バスケを選択した。【方法】対象は栃木県那須塩原市立青木小学校の6年生23人。ツインバスケットボールチームの選手3人、理学療法士4人で行った。午後の授業2時限分使用し、車椅子バスケの練習後に選手と児童を交えたチームを作り試合をした。【結果】授業後の児童の感想文では「車椅子バスケは楽しかった(15人)」「また青木小に来てほしい(7人)」「車椅子バスケ体験が出来て良かった、勉強になった(5人)」と車椅子バスケや選手との交流を楽しんだ感想や「車椅子生活は大変、可哀そうだと思っていたがいろんな事が自分で出来る(9人)」と障害に対する印象が変化した感想が多かった。また「車椅子の人を見かけたら優しく声をかけようと思った(1人)」と障害者に対して距離が縮まったと思われる感想や「どこが悪いのか分からなかった(1人)」と選手が障害を持っている事を実感しない児童もいた。【考察】5年生の授業では初めての車椅子操作や介助が大変だった故、障害=不幸というマイナスの印象を持った児童もいたが、実際に障害者と触れ合い自身で出来る事も沢山あることを知り、障害を身近に感じるとともに印象が変化したと思われる。しかし、階段昇降以外は介助がいらず華麗にバスケ車を乗りこなす様を見て、障害像をイメージ出来ない児童もおり、障害理解に関しては5・6年生の授業を通して課題が残った。この点を考慮し、次回は給食を一緒に食べたり1日を通して車椅子バスケ以外の日常生活に触れ合うなど、理学療法士の専門性を活かし障害像をどのように児童に伝えていくか、授業内容の再検討が必要である。【まとめ】物事を柔軟に捉える事が出来る学童期に障害に関してのさまざまな刺激を与えることで、障害を身近に感じ偏見や誤った固定観念を持つことなく障害者と接することが出来ると考える。そのために、我々理学療法士が専門性やネットワークを活かし媒体となっていく意義はあると考える。
著者
芝原 美由紀 河合 美智子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.B0658-B0658, 2004

【はじめに】学齢期の肢体不自由児に対して、PT関与の重要性は今まで多く報告されている。横浜市西部地域療育センターでは、学齢期の肢体不自由児にPT訓練を実施、又、専門クリニックのシーティングクリニックではPT・OTが業務として関わっている。学齢肢体不自由児の中でも重症心身障害児は、特に日常の生活体調の基礎である呼吸状態に配慮した姿勢設定をする必要がある。今回、成長に伴い座位保持装置を再作製した重症児3例から、PTが専門的な評価・判断から関わる必要を感じたので報告する。<BR>【対象と方法】対象はPT訓練を実施している学齢児3例である。3例は重度心身障害児で、呼吸状況は不安定で全員経管栄養である。症例1養護学校訪問学級の小学1年。染色体異常、痙れん発作で、気管切開している。痙性四肢麻痺で体幹は過緊張、強い前弯があり、両側股関節脱臼がある。症例2養護学校2年。難治性痙れん発作があり、不随運動を伴う混合型痙性四肢麻痺である。左に凸の側弯で左股関節脱臼がある。呼吸状態が不安定で、家庭に酸素が準備されている。症例3養護学校の5年。先天性サイトロメガウィルス感染症、痙れん発作を伴う四肢麻痺である。頭部頸部は正中保持が困難で、この姿勢により呼吸状態が変動する。左に凸の側弯と両側股関節が脱臼している。<BR>3例の重症児に対して、生活状況と機能評価を実施した。運動機能として姿勢筋緊張の影響、支持面の設定と負担など検討した。良肢位としての座位ではなく、生活の中で座位がどのような意味があるのか、考慮した。これにより介助軽減だけでなく、家族のニードに合うものを考え対応できる。呼吸と変形、座位の耐久性、と判断視点が多様であった。<BR>【結果と考察】3例共に体調は変動が大きく不安定で、しかも覚醒や姿勢により呼吸状態・反応性が影響されていた。症例1はわずかな姿勢変化で全身に反り返りが生じる。訪問学級の指導場面で積極的な肢位設定が必要な事から、緊張の影響が軽減するような座位を検討した。症例2は不随運動と体幹の非対称に対し座位を検討した。症例3は頭部非対称姿勢が呼吸に影響していた。呼吸安定する頭部と体幹の位置を評価し、家族と過ごせる場面の使用を検討した。3例は就学前の座位保持設定の変更が必要であった。<BR>在宅の重症児の場合、姿勢設定は本人の機能に基づくのは当然であるが、生活でどのように使用するのか、家族の意図を配慮した視点も必要であった。今回、座位自体がダイナミックな機能でもあることが確認できた。PTは評価として運動障害を明確にし、その上で生活場面を具体化していくことが重要である。姿勢設定は将来の機能に大きく影響し、生活の質に直結している。ヘルスプロモーションとして座位姿勢設定を提示するPTの評価が必要であった。重症児の座位姿勢設定に専門職として関わることが重要と考えられる。
著者
小池 朋孝 上田 康久 横山 美佐子 辺土名 隆 芝原 美由紀 川端 良治 岩松 秀樹 佐藤 優子 遠原 真一 安達 まりえ 広瀬 真純
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.369-369, 2003

はじめに<BR>呼吸理学療法(CPT)において、特に肺理学療法と呼ばれる用手的排痰手技は、痰の喀出、1回換気量の増大など、その場での効果の報告は良く見受けることができる。しかし、急性期における介入がどの程度の効果をもたらすかという報告は、特に小児急性期には見当たらない。当院では、小児呼吸器疾患重症例にCPTの適応、不適応を検討し、必要な場合にCPTを展開している。今回、小児急性期呼吸疾患により重度呼吸不全を呈した症例に対し、第1病日から医師、看護師、理学療法士から構成される小児CPTチームに参入し、CPTの適応、不適応を検討し、必要な場合にCPTを展開した症例を数例経験した。小児集中治療室(PICU)入室日数、入院日数、再悪化、再入院、人工呼吸器管理中の肺機能の肺コンプライアンスの指標として人工呼吸器の最高吸気圧(PIP)、酸素化の指標としてPaO<SUB>2</SUB>/Fi O<SUB>2</SUB>(P/F比)の推移を数値化し、一定の傾向が見られたので考察を交え報告する。<BR>症例1:1歳男児 クループ 肺炎 二次合併症として気胸を呈する<BR>症例2:6歳女児 ARDS<BR>症例3 4歳女児 ARDS<BR> 気管支喘息以上の3症例に対し可能な限り、早期から参入し、医師、看護師との相互の情報交換によりCPTの施行・非施行を判断し、必要な場合には適宜CPTを行うこととした。抜管後も、吸入時の呼吸介助、用手的排痰法を行い、一般病棟入院中家族指導、退院後外来フォローを行った。<BR>結果<BR>PICU入室日数、入院日数に関しては、病態の相違もあり一定の傾向は見られなかった。再度悪化し、一般病棟から、PICU管理となった症例や、人工呼吸器PIPを上げなければならない症例は認めなかった。P/Fについては悪化の傾向は見られなかった。退院後数ヶ月以内の再入院患者はいない。また、脳血管障害などの二次的合併症を生じた症例はいなかった。<BR>考察<BR>小児呼吸器疾患急性期の呼吸管理において、理学療法士が早期から介入することによる悪影響は示唆されなかった。また、医師、看護師との連帯を密にし、病態理解に勤め、適切な手技を選択することにより、肺二次合併症の予防、治療、肺のコンディションの維持につながると思われた。病態の理解により、CPTが急性期呼吸管理に有用であると示唆され、状態の換気力学的な解釈などの観点から理学療法士の介入に意義があると思われる。