著者
森永 珠紀 二木 昌人 野沢 美夕起 中田 稔
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.29-36, 1996-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
30

抜去ヒト小臼歯を用いて,永久歯咬合面非切削エナメル質のリン酸エッチング時間および脱灰効果とシーラントの接着性との関連性を調査検討した。15秒,30秒,60秒の3種類のエッチング時間を設定し,エッチング後のエナメル質表面形態の違いを走査電子顕微鏡を使用して観察した。その結果,エッチング時間が長くなる程より強い脱灰像が観察され,裂溝底周囲部よりも平滑部において,より明瞭な,エナメル小柱周囲が脱灰された像が多く観察された。また,エッチング時間がシーラントの接着性に与える影響を,サーマルサイクリングテストおよび色素浸透試験によって,辺縁封鎖性およびシーラント・エナメル質界面部のギャップ形成の面から調査した。その結果,15秒および30秒エッチング群は60秒エッチング群と比較して辺縁封鎖性が有意に優れていた。また,ギャップの発生は15秒エッチング群が60秒エッチング群に比べて少ない傾向が認められた。しかしながら,エッチング時間にかかわらず,辺縁封鎖が良好な場合でも裂溝内部とくに深部にギャップが観察される例が多く認められた。以上の結果から,エッチング時間を延長することでエナメル質表面の脱灰は進行するが,形態的な脱灰の強さとシーラントの接着性との間には単純な相関は認められなかった。即ち,シーラントの接着には至適な脱灰度が存在すると予測された。