著者
羽田 健三 野沢 進之輔
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.473-486, 1969-06-30 (Released:2008-11-10)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

1.長野県長野市信州大学教育学部構内で1967年に,キジバト(Streptopelia orientalis orientalis)の繁殖生活を観察した。2.巣造り期間は2~4日。♂は枯枝を嘴で折ったり,地上から拾ったりして巣材運搬のみに従事し,♀は巣場所でそれを受けとり,小枝を組み合わせて巣を造る。3.卵数は4巣において2卵で,1巣のみ1卵であった。抱卵は1卵産卵後から行ない,♀と♂が朝方と夕方2回交代し,♀は夕方から夜間を経て朝方まで平均17時間,♂は昼間の平均7時間続けてだく。抱卵日数は15~16日間であった。4.給餌は♀,♂とも行ない,親の口の中へ雛が嘴を入れ,親は首を上下にふりながら液状の餌を戻して口うつしをする。抱卵は育雛前,中期まで抱卵タイプでの♀♂交代が続き,抱雛しながら夫々の親が給餌する。このため前,中期ほど給餌回数が多く14~19回となり,後期は給餌だけに巣を訪れ1日3~4回である。巣立ちはふ化日から15~17日間である。5.次の繁殖は同じナワバリ内で巣場所をかえて行ない,抱卵期に入ると♂だけが前巣の雛に給餌する。6.キジバトのナワバリはMAYR(1935)の分類のB型に属する。7.繁殖諸仕事の♀♂分担は次のようである。抱卵,抱雛の割合の約70%は♀であり,給餌はその60%が♂である。ナワバリ防衛は90%以上を♂が受けもつ。