著者
野澤 千絵
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.181-186, 2012-10-25 (Released:2012-10-25)
参考文献数
4
被引用文献数
3 1

本研究は、近年、3411条例の区域指定を廃止した大阪府堺市と埼玉県川越市を対象に、3411条例の区域指定の全面廃止に至った要因を実証的に明らかにし、今後の人口減少社会に向けた市街化調整区域の開発許可制度に関するあり方を考察した。3411条例の区域指定廃止に至った要因は、両市ともに条例施行後、市街化区域よりも、調整区域に占める開発許可面積割合の方が高くなり、調整区域における旺盛な宅地開発が発生したこと、生活排水の水路への流入や農地の日照阻害等の営農への影響、新旧住民の軋轢の多発、急激な農地や樹林地の減少、市街化区域における開発意欲低下など、複数の要因が重なり、市民・農家・議員など多方面からの苦情の声に無視できなくなってきたことなどが明らかとなった。今後の市街化調整区域における開発許可の立地基準は、新規住宅の開発需要を、既成市街地の新陳代謝に有効に活用する観点から、「既成市街地の空洞化を促進するおそれがない開発行為」に限定する、といった視点からの再構成が必要であることなどを考察した。