著者
中村 剛 野瀬 善明 高辻 俊宏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の最大の成果は、福岡市医師会との密接な協力関係のもと、「大型回遊魚の摂取⇒有害ミネラルの蓄積⇒乳幼児健康異常」といった仮説を検証し、臨床還元するためのプロジェクトが動き出したことである。九州大学医学部倫理委員会で承認され(代表者:野瀬善明教授)、既に親子約600組のコホート集団が構成されつつあり、毛髪の測定機器の準備も整いつつあるが、本研究の範囲を越えるので詳細は省く。以下において、項目ごとに研究成果のまとめを記す。1.多変量比例ハザード測定誤差モデル用FORTRANプログラムを作成しアップした。2.食習慣調査と遺伝要因調査:タッチパネルとパソコンを連動することにより、液晶画面にタッチして回答を入力するシステムを開発した。質問内容は(1)アトピー性皮膚炎診断のための5項目、(2)肉、野菜、魚の摂食割合、(3)よく食べる寿司ネタ、(4)大型回遊魚の摂食回数に関する3項目、からなる。3.長崎市保健センターにて実施した結果80%という期待通りの受診者が参加した。しかし、質問紙によるアンケートも実施し、回答率、信頼性を比較した結果、大勢を対象とした調査では、質問紙による方が優れていると結論された。4.約600名の分析結果として7%がアトピー、更に7%がアトピー疑い、とされた。5.ロジスティック回帰モデルによる解析の結果、(1)親族にアトピー、ぜんそく、アレルギー体質の方がいるとアトピーのリスクが高い。(2)女のほうが男よりアトピーのリスクが高い。(3)小型魚の割合が高いほどリスクが低い。(4)卵の回数が多いほどリスクが低い。特に0から2までのリスクの減少が大きい。結論:大型回遊魚との関連はみられなかったが、性別、遺伝要因の影響を修正したあとに、小型魚の摂食回数がリスクを減少するという新たな知見を得た。また卵の摂食回数が少ない程リスクが高いのは、家庭での料理の回数が少ないほどリスクが高いことを示唆していると推察される。