著者
松本 由記子 若桑 基博 行弘 文子 蟻川 謙太郎 野田 博明
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.111-118, 2014-05-25 (Released:2014-11-15)
参考文献数
19
被引用文献数
4 11

イネ害虫トビイロウンカの光応答とそれに関連する分子に関する基礎的な知見を得るために,フォトン数を合わせられるLEDを用いての誘引実験,オプシン遺伝子同定および複眼の構造解析を行った.暗箱内での粘着板を用いた実験では,一方向からの光照射の場合は365–735 nmの広い波長範囲でトビイロウンカの誘引が見られた.また,両方向から等フォトンの光を照射した場合,選好性は 365 nm=385 nm>470 nm=525 nm>白色LED=590 nm>660 nm>735 nm>850 nm の順に有意に高かった.トビイロウンカ複眼の分光感度は520 nmに高いピークと360 nm にそれより低いピークが見られ,660 nm以上の長波長に対しての光受容感度は非常に低かった.トビイロウンカの光受容遺伝子は,長波長オプシン1種とUVオプシン遺伝子2種が見つかった.長波長オプシンは複眼の全体と単眼で,UVオプシン1は触角周縁部の下側で,UVオプシン2は複眼の全体で発現していた.ウンカ複眼の個眼は少なくとも8個の視細胞からなっていた.