著者
西村 潤也 寺岡 均 北山 紀州 埜村 真也 野田 英児 西野 裕二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2836-2841, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
22
被引用文献数
3 4

症例は63歳の男性で,右鼠径ヘルニアに対して2013年8月に腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した.同年10月より右鼠径部の膨隆を自覚したため外来受診し,CTにて創部に膿瘍形成を認め術後感染と診断した.保存的加療では軽快せず,同年11月に手術を施行した.鼠径部からのアプローチにて膿瘍腔を開放し,壊死組織の除去および洗浄を行ったが,膿瘍腔とメッシュは接しておらず,メッシュの摘出は行わなかった.術後,創部に留置したドレーンを用いて洗浄を継続するも軽快せず,2014年1月に腹腔鏡下でのメッシュ除去術を施行した.メッシュは周囲組織と強固に癒着しており摘出に難渋した.術後,創部感染は速やかに改善し,現在までヘルニアの再発も認めていない.今回われわれは,腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術後のメッシュ感染に対して,腹腔鏡下にメッシュ除去を行い根治しえた貴重な1例を経験した.
著者
黒田 顕慈 野田 英児 高田 晃次 南原 幹男 木下 春人 原 順一 河内屋 友宏
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.41-46, 2017 (Released:2016-12-26)
参考文献数
16

症例は44歳の男性.潰瘍性大腸炎に対して大腸全摘術(1期目:腹腔鏡下結腸全摘術・回腸瘻造設術,2期目:残存直腸切除術,J型回腸嚢肛門管吻合,3期目:回腸瘻閉鎖術)を施行した.術後12日目に腸閉塞症状が出現,その後下血がみられ,下部消化管内視鏡検査にて回腸嚢内に湧出性出血を伴う多発性潰瘍を認めた.回腸嚢炎と考え,抗生剤の投与にて経過をみたが,再度下血が出現し,ショックバイタルとなった.回腸嚢より口側からの出血が疑われ,緊急試験開腹術を施行した.術中内視鏡検査にて空腸内に散在性の潰瘍を認めたが明らかな出血源は指摘しえなかった.病状経過よりUC関連の小腸炎が疑われ,プレドニゾロンおよびメサラジンの内服加療を行ったところ,下血は消失し,6ヵ月経過する現在も再燃を認めていない.潰瘍性大腸炎に関連した大腸全摘術後の小腸炎にて治療に難渋した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.