著者
金 惠淑
出版者
岡山大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

クロロキンをはじめとする既存抗マラリア薬に対する耐性熱帯熱マラリア原虫が出現し、既存の抗マラリア薬では治療できない状況になりつつある。そのために新しい抗マラリア薬の開発研究はマラリアに関する最優先研究事項である。私は、薬用天然資源の中から薬剤耐性マラリアを克服できる新規マラリア治療薬を開発し、マラリア制圧に寄与することを研究目的として本研究を進める。本研究では今までの研究で得られた新規構造を有する天然生薬成分、及び天然薬用資源中の薬効成分をリード化合物とし、熱帯熱マラリア原虫における抗マラリア薬候補の最適化、薬効を示す分子標的の同定、及び、その遺伝子機能を解析する。また、アフィニティ法とプロテオミクスを用い、高い確率で抗マラリア薬のターゲットになりうる分子標的を選抜する。さらに、薬剤耐性のメカニズム解析を行い、薬剤耐性を克服するための基盤研究を行う。平成17年度の研究成果を下記に示す。1.メフロキン高度耐性熱帯熱原虫(R/24株)を用い、pfmdr-1遺伝子の変異ヵ所が実際のマラリア流行地の患者でも見られるかどうか、マラリア流行地の血液サンプルを用いて解析した。タイのマラリア患者、及びタンザニアの患者由来のサンプルを用いてR/24株で見られる変異ヵ所を調べた結果、変異ヵ所は見られなかった。今後、メフロキン耐性が流行する地域の患者サンプルを増やして検討する。また、プロテオミックスとトランスクリプトームを駆使してメフロキン耐性メカニズムの解析を開始した。2.生薬天然資源由来の租抽出分画由来のサンプルを用いて校マラリア活性を検討した結果、6種類の天然資源由来より強い抗マラリア活性が見られた(EC_<50>=<1μg/ml)。現在これらサンプルを更に分画して活性化合物を見出す研究を進めている。3.生薬アルテミシニン誘導体の研究を行い、10^<-8>M程度で強い抗マラリア活性を示す種々の抗マラリア活性を示す誘導体を得たので、構造-活性の関連性を検討している。