著者
金 昌龍 渡部 和彦
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.369-379, 2003-08-01
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

本研究は,太極拳を実施している中・高齢者34名を対象に太極拳の実践が立位姿勢保持に関するバランス機能にいかなる効果をもたらすかについて,イクイテストシステムの分析によりその関連性について調べた。その結果,以下の知見が得られた。1.太極拳の実践は短期間ではその効果は現れにくいが,継続的な実践によって,中。高齢者のバランス機能の能力を向上させ,あるいは機能低下を遅延させる可能性が示唆された。2.水平移動を伴う外乱刺激に対する身体応答の速さは,太極拳の実践によってその機能の向上が期待できるという可能性が示された。3.脚の伸展筋力は太極拳を長期間実践することにより,ある程度の衰えを防ぐ可能性が示されたが,脚筋力とバランス機能との間には相関関係が認められなかった。4.太極拳を長時間継続することはヒトのバランス機能の向上に貢献できる可能性を示した。静的バランス機能より動的なバランス機能への貢献の可能性が示された。