著者
金 松美 Song-mi Kim
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.125, pp.55-75, 2018-05-31

本稿の目的は、日韓の社会福祉学分野の文献において、「カルチュラルコンピテンス」に関する概念がどのように取り上げられているかについて検討し、今後の研究課題を提言することである。対象は日本の文献11件、韓国の文献22件であった。分析の結果、カルチュラルコンピテンスは文化的認識・文化的知識・文化的技術・文化的センシティビティーなどの内容が含まれる「包括的概念」、同僚・上司・組織及び多文化教育や訓練に関連する「連携的な概念」、業務の経験が重なりつつ肯定的な方向に発展していく「成長的な概念」であることが明らかになった。また、日本の文献は障がい者・児童など支援対象がより広範であり、韓国の文献は外国人に関する論文に集中していた 。日本の文献の主な内容は「教育」や「実践」などであったが、韓国の文献には「影響を与える要因」や「尺度開発」などが見られた。この結果を踏まえて今後の研究のための提言を行った。