著者
池内 健太 深尾 京司 René Belderbos 権 赫旭 金 榮愨
出版者
科学技術政策研究所
巻号頁・発行日
2013-05 (Released:2013-06-11)

本研究では、1987-2007 年の日本の製造業の工場レベルのパネルデータを研究開発投資に関する個票データと接続し、研究開発(R&D)ストックが工場レベルの生産性に与える効果について定量的な分析を行った。本研究の特徴として、企業間のR&D スピルオーバーに加え、公的R&D のスピルオーバーが民間企業の生産性に与える効果について分析を行うとともに、R&D スピルオーバーがどのような経路を通じて起きるのかについて、技術的近接性・地理的近接性・関係的近接性(取引関係・資本関係)の3つの概念に注目して分析を行った。分析の結果として、工場の生産性は自社のR&D ストックのみならず、技術的・地理的に近接する他社のR&D から影響を受けており、さらに技術的に関連する分野における大学及び公的研究機関のR&D も工場の生産性に影響を与えていることが明らかとなった。特に、大学・公的研究機関のR&D の工場の生産性への影響は企業自身がR&D を積極的に行っている場合はより大きくなる。また、取引関係と資本関係が企業間のR&D スピルオーバー効果を強めることがわかった。