著者
金 鍾其
出版者
一般社団法人 芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.88-95, 2010-09-30 (Released:2017-11-30)

本研究では、チタン金属の発色法である陽極酸法を発展させ、化学酸化法と組み合わせた新しい発色法を試みた。従来の陽極酸化法で発色した色は全般的に鮮やかで原色に近い色が多い。そのため色彩設計上色彩バランスに欠けるきらいがあった。したがって陽極酸化法で発色できる色の数をさらに増やすため、特に様々な中間色を発色できるように試みた。従来の陽極酸化法が赤-緑および黄-青色に関するより鮮やかな原色であるのに比べ、化学酸化法と組み合わせた新しい陽極酸化法では、中間色に近い淡い色味の色彩が得やすい。原色も中間色のどちらも色彩設計上必要であり、陽極酸化法と化学酸化法を組み合わせた新しい発色法は共に必須である。具体的な中間色の発色法として、従来黒色を得るためのみに実施されてきた化学酸化法を発展させ、一旦形成した黒色層を脱色し、引き続いて陽極酸化法を実施することで中間色に近い色相や低明度、低彩度の色が得られた。すなわち黒色を脱色する度合が重要である。また、本研究では目視による色彩判定だけでなく、測色計による定量的な比較を行いプロセスの再現性が容易になった。最後に、マグネットホルダーとしてチタン金属板に従来法と本研究で検討した発色法の両者で試作した例を示した。両者に測色計では計測不可能な色味の違いが存在し、従来法ではギラギラした光沢感が、また後者ではマット面からの反射のくすんだ色調が得られることが判った。