- 著者
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金井 昭彦
- 出版者
- 公益社団法人 土木学会
- 雑誌
- 土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.1, pp.12-27, 2017 (Released:2017-04-20)
- 参考文献数
- 44
19世紀のヨーロッパにおいては,大都市の駅舎にはトレイン・シェッドが建設され,駅空間のシンボルとして君臨してきたが,現在においてもその圧倒的な存在感は失われていない.この技術空間であるトレイン・シェッドは,列車や旅客防護等の基本的な機能に加え,ホーム上のすべての移動を妨げないようにスパンを増大し,蒸気機関車の排出する煤煙を処理することが求められた.しかしながら,本研究では,この機能的側面に加えて,当時の技術や時代背景,鉄道の大衆化や国際化に伴う都市の玄関ホールとしての役割などを,エンジニア・建築家の言説,あるいは芸術家たちの描写から読み取ることによって,トレイン・シェッドの象徴的側面を明らかにし,その存在理由を総括的に考察することを目的とする.