著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.20-29, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
27

第二海堡は,軍事要塞として明治32年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間,第二海堡は1923年の関東大震災によって被害を受け,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.現在,護岸の保全を行い,その一部は当時の護岸を復旧させることを検討している.本稿は,工学的立場から,国内で初めての海上人工島築造に対する海堡建設計画,建設技術,設計技術など明治期土木構造物の建設技術をとりまとめ,現代技術への展開について考察を行った.
著者
岡田 幸子 小林 一郎 増山 晃太 田中 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.76-85, 2016 (Released:2016-08-20)
参考文献数
25

「軌道用敷石」とは,近代の都市交通の主役を担ってきた路面電車に欠かせない「板石舗装」〔1957(昭和32)年には全国の軌道敷舗装の78.84%を占めていた〕の表層に用いられる舗装材である.板石舗装用材として最も普及した軌道用敷石は,路面電車を支えてきた重要な石材だった.本研究ではこれまであまり研究されてこなかった軌道用敷石の体系化の基礎資料として,軌道用敷石の規格と産地を調査し,整理することを目的とした.その結果,軌道用敷石は舗装材の要求性能を満たす仕様(材質,形状,寸法,許容差,仕上げ)が明確な規格品であり,国内の主要6ヶ所の産地(茨城県稲田,群馬県沢入,山梨県塩山,岐阜県恵那,広島県倉橋島,香川県小豆島)から明治から昭和にかけて全国に供給された花崗岩であることが明らかになった.
著者
田中 鉄二 樋口 輝久 馬場 俊介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.38-48, 2011 (Released:2011-10-20)
参考文献数
64

日々軌道を検査し,線路に発生する様々な異常を整備することが保線作業であり,保線なしで安全で快適な鉄道運転は成り立たない.輸送量の増加,速度の向上,使用機械及び材料の変化,さらには,鉄道事故や戦争の影響によって保線は変化し続けてきた.そこで本論文では,保線を行う際の規範となり,鉄道創業時から制定され続けている“規程”に着目し,鉄道創業時から国鉄の分割民営化後までの鉄道保線の変遷を明らかにしようとする.対象とした組織は,官設鉄道,国有鉄道そしてJRで,民営鉄道は除いている.まず,規程についての概略を述べた上で,保線に影響を与えた重要な出来事について整理し,作業,材料(レール,枕木,道床,分岐器)に区分して,その変遷を明らかにした.
著者
西山 孝樹 藤田 龍之 知野 泰明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.123-131, 2012 (Released:2012-11-20)
参考文献数
64

わが国では,10世紀をピークとして9世紀から11世紀にかけて,「土木事業の空白期」が存在していたことを本研究で指摘した.その背景には,10世紀における律令国家の崩壊が最も影響したと考えられる.そして更なる要因として,平安貴族を中心に,土の掘削を忌み嫌う「犯土」思想が,10世紀後期から11世紀に存在しており,その思想が「土木事業の空白期」に影響を及ぼしていたとみられることを示した. しかし,空白期における土木事業は,全く実施されなかったわけではなかった.わずかではあるが,僧によって行われており,文献史料を中心に彼らの事績をまとめた.そして,「犯土」思想が僧による土木事業に影響を与えたかについても迫り,平安時代における「土木事業の空白期」の実態を明らかにした.
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.20-29, 2014

第二海堡は,軍事要塞として明治32年に人工島が竣工し,建設後100年が経過している.その間,第二海堡は1923年の関東大震災によって被害を受け,長年の風浪等により劣化・損傷・崩壊が進行している.現在,護岸の保全を行い,その一部は当時の護岸を復旧させることを検討している.本稿は,工学的立場から,国内で初めての海上人工島築造に対する海堡建設計画,建設技術,設計技術など明治期土木構造物の建設技術をとりまとめ,現代技術への展開について考察を行った.
著者
野口 孝俊 浦本 康二 鈴木 武
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1-10, 2015 (Released:2015-03-20)
参考文献数
22

第二海堡は,明治期後半に建設された東京湾中央部に位置する軍事要塞跡である.要塞はコンクリート,煉瓦,石材,土により建設された土木構造物(地盤構造物)である.築造100年を経過している近代遺産であるが,軍事施設であるため設計・施工や完成断面などの建設記録が残されておらず,耐久性の検討を行うことが難しい状況にある.本稿は,第二海堡における煉瓦の特徴をとりまとめ,周辺類似施設と比較することで,明治期の東京湾砲台群建設における煉瓦の調達の関係を考察し,材料の特定に必要な煉瓦構造物の建設年次および材料調達を推測した.
著者
中根 洋治 奥田 昌男 可児 幸彦 早川 清 松井 保
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.22-37, 2012 (Released:2012-02-20)
参考文献数
48

本稿では,静岡県の赤石山脈の南端にある,我が国の代表的な尾根を通る秋葉古道を研究対象とした.この古道について,中世以前のことがこれまで明らかにされていないので,その成立過程と果たしてきた役割などを研究した.秋葉古道は時代と共に黒曜石・巨石信仰・塩・修験道・秋葉信仰・戦いの道などに使われてきたが,文献調査,現地踏査及び聞き取り調査により,その成立過程とともに浜松市を代表とする遠州と飯田市を代表とする南信州を結ぶ古道の役割についても研究した.その結果,最古の道は兵越峠を越えていたこと,そして,時代が下がるにつれて利用されたルートが低い位置に推移していること,また秋葉古道の役割として,物や人の運搬に関することおよび信仰などのために使われてきたことを明らかにした.
著者
小方 武雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.61-71, 2013 (Released:2013-05-20)
参考文献数
9

7世紀後半~11世紀初頭にかけて,律令体制の整備に伴い駅伝制が行われ,駅路が全国展開することとなる.神奈川の地においても,駅路が整備されたが,具体的に何処を通っていたかについては従来様々な説がある.今回はそれらの視点に加え,古墳や地域の豪族,「延喜式」に掲載された式内社,直線道路のさらなる活用などの視点を加えて検討を行い,各時代における駅路のルートを求めた.ルートの検討に当たっては明治迅速図を使用したが,この地図には等高線が細かく入っているので縦断の比較も行うことが出来た.さらに,駅家の位置についても比定を行い,駅家間の距離について調査を行ってその妥当性について検討を行った.他の府県において,駅路のルートがはっきりしていないものがある場合には,今回のような視点が参考になればと思う.
著者
村上 理昭 山口 敬太 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.11-24, 2015

堺大濱では,明治期半ば以降,堺市や阪堺電気軌道株式会社によって公園地経営が進められた.本研究では堺市会決議録・会議録や行政資料,大阪毎日新聞堺周報等の資料をもとに,堺市大濱公園における管理と経営の変遷と,作り出された海浜リゾート空間の形成過程を明らかにした.具体的には,堺市による官有地を借り受けての料理屋・茶店営業を主とした遊園地経営,内国勧業博覧会を契機とする水族館と西洋式広場の整備,堺市の財源不足や鉄道会社間の競合関係を背景とした阪堺電気軌道の公園経営への参画と公会堂や潮湯などの文化・娯楽施設の整備,市と阪堺電気軌道の考えの相違による契約解消,といった公園地経営の経緯を明らかにし,海浜リゾートとしての空間形成の実態を明らかにした.
著者
簗瀬 範彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-20, 2011

本研究は19世紀に作成された地籍図の面積誤差の原因を考証したものである.現在の地籍制度は,明治期の税制革改である地租改正時の土地台帳とその付属地図を淵源としている.数%からときには10%以上に及ぶ面積誤差の原因は,当事者である農民の拙劣な測量技術,重税を逃れようとする農民の計測の誤魔化し,官側の検査の杜撰さ等によるものと一般に認識されている.しかし,いわゆる「縄伸び」と呼ばれる登記簿面積と実測面積との差は,概ね官側から提示された許容範囲内にあることを地籍図に関する測量基準の分析から明らかにした.併せて,分筆対象の筆全体を実測なしに分筆する制度が長らく行われたことや農地改革に伴う国有地解放なども地籍図における面積誤差の原因の一部であることを指摘しておきたい.
著者
林 倫子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.53-67, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
90

宇治川電気株式会社(宇治電)による宇治川水力発電事業第一期工事では,初期の設計変更により水槽と水圧鉄管が平等院の宇治川対岸にあたる仏徳山(隣の朝日山含む,宮山とも表記される)の山腹に設けられることとなり,景勝地宇治の風致毀損が問題となったものの,本多静六による「風致復旧設計」により解決を見た.本研究では,同工事における風致対策の検討過程を明らかにした.その結果,宇治の風致対策として,本多案とは異なる方針や具体的手法が宇治電や地元保勝会より提案されていたこと,また大森鍾一京都府知事の意向が強く反映されて風致対策が決定されていたことが明らかとなった.
著者
村上 理昭 山口 敬太 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 D2(土木史) = Journal of Japan Society of Civil Engineers, Ser. D2 (Historical Studies in Civil Engineering) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.11-24, 2015

堺大濱では,明治期半ば以降,堺市や阪堺電気軌道株式会社によって公園地経営が進められた.本研究では堺市会決議録・会議録や行政資料,大阪毎日新聞堺周報等の資料をもとに,堺市大濱公園における管理と経営の変遷と,作り出された海浜リゾート空間の形成過程を明らかにした.具体的には,堺市による官有地を借り受けての料理屋・茶店営業を主とした遊園地経営,内国勧業博覧会を契機とする水族館と西洋式広場の整備,堺市の財源不足や鉄道会社間の競合関係を背景とした阪堺電気軌道の公園経営への参画と公会堂や潮湯などの文化・娯楽施設の整備,市と阪堺電気軌道の考えの相違による契約解消,といった公園地経営の経緯を明らかにし,海浜リゾートとしての空間形成の実態を明らかにした.
著者
難波 匡甫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.50-60, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
32

地盤沈下を背景に,東京と大阪では防潮堤,防潮水門等による高潮対策が講じられてきた.東北地方太平洋沖地震以降は,津波への対応強化が進められている.また,東京や大阪では近年の水質改善等にともない,河川や臨海部での水辺利用による地域活性化が積極的に図られている. こうした新たな社会状況下において,今後の高潮対策では防潮方式の多角的かつ抜本的な検討が必要であると考える.東京と大阪では,高潮対策における防潮方式に違いがあり,東京では陸地を防潮堤で囲い込む「輪中方式」が,大阪では河川本川に大型防潮水門を設置する「防潮水門方式」がそれぞれ採用されている.本研究は,高潮対策事業の経緯等から東京と大阪における防潮方式に違いが生じた要因を探ることにより,今後の防潮方式の抜本的な検討に寄与することが目的である.
著者
西村 勝広
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.1-9, 2018 (Released:2018-01-20)
参考文献数
18

古墳は古代の土木構造物である.近年,土木考古学という分野が提唱され,考古学のみではなく土木学的な研究の必要性が説かれている.本稿は,地方に所在する古墳時代前期の坊の塚古墳と後期の北山古墳群を事例に取り上げ,築造工法の合理性と変化について土木史の観点から論考した. 坊の塚古墳では,自然地形を合理的に利用した築造の可能性を考察した.また,墳丘と周壕をモデル化して,墳丘の盛土が周壕の掘削土によって合理的に賄われることを試論した.北山2号墳では,山麓部の傾斜面に墳丘を構築する場合の合理的な工程を,発掘調査から得られた平面図と土層断面図に基づいて復元した. これら築造時期の異なる古墳の合理性を比較し,古墳時代後期では工程の省力化が目立つことを示し,社会情勢の変化による古墳の普及と結び付けた.
著者
福井 次郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.28-41, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
19

大正後期から昭和前期に多数の橋梁を設計した増田淳は,個人ではなく設計事務所で設計業務を行っていた.しかし,この設計事務所の組織体制や,増田が全ての橋の設計の中心的立場であったかどうか等は不明であった.今回,旧独立行政法人土木研究所で発見された設計計算書,設計図に記入されている担当者のサイン,日付を分析し,設計事務所の組織体制,活動状況等を調査した.調査の結果,設計事務所の技術スタッフは約10名で,各職員の氏名や担当した構造物等が明らかとなった.その中で,稲葉健三は増田に劣らない設計技術を有しており,稲葉が設計事務所の中心的立場であったこと等が明らかとなった.
著者
清水 英範
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.49-68, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
62

ジョサイア・コンドルが明治18年(1885)1月に立案した官庁集中計画は,霞が関を官庁街,日比谷を公園とすることを初めて示した計画であり,近代都市計画史上,重要な意味を持っている.しかし,この計画に関する既存研究は極めて少なく,計画に至る経緯やコンドルの計画意図については,これまでほとんど明らかにされてこなかった.本研究は,幾つかの新たな史料を用いて,この問題に初めて迫り,1)太政官による官庁集中計画の実施とコンドルの登用は,井上馨が明治17年4月に提出した建議により決定されたこと,2)コンドルの計画には二案あったが,コンドルの本意は,諸官庁を日比谷練兵場内西側及び教導団の土地に集約し,地質粗悪な日比谷練兵場内東側を大公園とする,第二案の方にあったことなど,幾つかの新事実を明らかにした.
著者
馬場 俊介 樋口 輝久 山元 亮 島田 裕介 横井 康佑 木田 将浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.107-122, 2012 (Released:2012-10-19)
参考文献数
4

著者らが2007年から実施してきた「近世以前の日本の土木遺産の総合調査」では,データ蓄積と現地調査,ならびに,WEB公開を同時並行で進める中,残存遺構の価値を,(1)保存状態と(2)本質的価値に分け,後者については試行的に判断・公開してきた.保存状態の評価基準の作成に比べて本質的価値の評価基準の作成が遅れたのは,基準作成にあたって相当数のデータ蓄積が必要であり,かつ,文献上の確認も数多く必要となったからである.この度,調査開始5年目にしてようやく基準を作成できる水準に達したと判断したことから,遺構の中で最もデータ数の多い道路遺産(道標・町石・常夜灯)について,本質的価値の基本的概念を,その背景となったバックデータとともに示す.また,各評価対象項目の1位に相当するものを個別に紹介する.
著者
山口 敬太 田中 倫希 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.39-54, 2015 (Released:2015-09-20)
参考文献数
67

本研究は,戦前の大津における都市計画街路と湖岸埋立及び遊覧施設計画の内容と策定意図,実現過程を明らかにし,これらを通じて近代大津の都市建設の理念,実現の手段と主体のはたらきを明らかにするものである.大津では明治末年以降,市会を中心に湖岸埋立・道路整備構想が数度立案され,昭和初期には琵琶湖の風致整備を基軸とした近代的「遊覧都市」の建設という理念が確立し,このもとに都市計画街路網・埋立計画や遊覧施設計画が策定された.これらの計画は名勝地の連絡による遊覧交通系統の充実と,遊覧施設や湖岸の風致の整備を意図したものであった.湖岸埋立と逍遙道路は公有地の売却益による事業収入をもとに戦前から戦後にかけて実現した.これは市,県の遊覧都市建設という理念の共有に基づいた長期にわたる協働的推進によるものであった.
著者
村上 理昭 山口 敬太 川崎 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.11-24, 2015 (Released:2015-06-20)
参考文献数
95

堺大濱では,明治期半ば以降,堺市や阪堺電気軌道株式会社によって公園地経営が進められた.本研究では堺市会決議録・会議録や行政資料,大阪毎日新聞堺周報等の資料をもとに,堺市大濱公園における管理と経営の変遷と,作り出された海浜リゾート空間の形成過程を明らかにした.具体的には,堺市による官有地を借り受けての料理屋・茶店営業を主とした遊園地経営,内国勧業博覧会を契機とする水族館と西洋式広場の整備,堺市の財源不足や鉄道会社間の競合関係を背景とした阪堺電気軌道の公園経営への参画と公会堂や潮湯などの文化・娯楽施設の整備,市と阪堺電気軌道の考えの相違による契約解消,といった公園地経営の経緯を明らかにし,海浜リゾートとしての空間形成の実態を明らかにした.
著者
西山 孝樹 知野 泰明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.11-21, 2012
被引用文献数
1

江戸幕府の河川技術流派である"紀州流"の出所である和歌山県,その北部を西流する紀の川両岸は河岸段丘が拡がり,近世初頭まで溜池と紀の川に注ぎ込む中小河川に堰を設けて灌漑が行われて来た.本研究では,"紀州流"の原点を見出すことを最終目的とし,紀の川上・中流域において荘園が形成された11世紀末以降から近世中期までの灌漑水利の変遷について研究を行った.本研究の結論として16世紀頃から荘園制度が消滅していき,近世初頭の応其上人による溜池の築堤や改修,紀州藩の事業として紀の川の堤防築堤や用水路開削が行われ,紀の川に対して横断方向の開発から本格的に大規模な縦断方向の新田開発へ転化していったことが明らかとなった.