著者
山本 季来 金丸 眞一 辻 拓也 窪島 史子 金井 理絵 西田 明子
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.28-33, 2014 (Released:2015-07-01)
参考文献数
11

一般的に髄液耳漏は頭部外傷・腫瘍性疾患・炎症性疾患・手術後の合併症などが主な原因と考えられているが、これらの既往がなく、内耳正常の成人型特発性髄液耳漏は極めて稀である。今回我々は難聴・頭痛・めまい・鼻漏を主訴に当科を受診した特発性髄液耳漏に対して乳突開放術を行い、確定診断かつ治癒に至った症例を経験した。術前のCT、3D-CT、造影MRI、脳槽シンチグラフィーなどの複数の検査結果に基づく疾患部位の予測が、術前診断かつ治療方針決定に非常に有用であった。また本症例は術中診断で脳ヘルニアの状態にあったが、経乳突法のみで頭蓋底再建が可能であった。術後は聴力・頭痛・めまいの改善を認め、約1年4カ月経過したが明らかな再発を認めていない。
著者
金丸 眞一 金井 理絵
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.131-134, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
6

鼓膜再生療法は、皮膚外切開や自己組織の採取を伴わない組織工学的手法による再生医療として非常に有効な治療であるが、その適用にはいくつかの必須項目を満たす必要がある。鼓膜再生の処置に鼓膜穿孔縁の新鮮創化があるが、これには鼓膜穿孔縁が顕微鏡下で直視できなければ行えない。また、鼓膜穿孔の原因の大半は慢性中耳炎で、多くの場合、鼓室や鼓膜に軽度湿潤し、完全な乾燥状態でないため鼓膜再生の適応ではない。これらの症例に対して、前者では外耳道の拡大や内視鏡の使用。また、後者では、経鼓膜的に鼓室内の洗浄・清掃を行うことで適用症例の拡大を図ってきた。これまで、鼓室形成術や鼓膜形成術を施行せざるを得なかった症例に対しても、その一部は鼓膜再生を併用した低侵襲の本治療法が有効であると思われる。