著者
宮城 一郎 當間 孝子 金城 高子 玉城 美加子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第61回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2009 (Released:2009-06-19)

自然界でカエルの鳴き声に誘引され吸血行動を開始するマクファレンチビカ(Uranotaenia macfarlanei Edwards)の 生態を明らかにするために,室内で累代飼育を試みた.2007年3月と5月に西表島古見(IR系)と沖縄本島北部(Yn系)の森林内でカエル鳴き声トラップにより採集したマクファレンチビカの雌に現地で捕獲したヌマガエルを一晩暴露し吸血させた.琉球大学の実験室に吸血個体を持ち帰り,いろいろな方法で累代飼育を試みた.その結果下記の方法で室内累代飼育に成功した. 成虫は大型ケージ(60 x 60 x 30cm)に,雌雄各100個体を入れて,室内・自然条件下で飼育.ケージ内には綿に染ませた2%砂糖水を吊り下げ,床全面に濡れたタオルをひいた.綿やタオルは2,3日毎に交換し,常時湿らせておいた.カエルを蚊飼育ケージ内で暴露,吸血,2-3日後,水と水草を入れた産卵容器(直径8cm,高さ5cm)をケージ内に置いた.卵(期間は2-3日)は平均40卵からなる塊状で水面に産卵され,浮遊していた.1-3卵塊からふ化した100-120幼虫をバット(32 x 23 x 5cm)に移し,毎日,餌(マウスの固型資料1+エビオス1の粉末)を与えた.バットの水を清浄に保つために,水草を入れ,エアーレイションを行って飼育した.幼虫期間は9-15日,蛹期間は2-3日,羽化率は74%であった.受精率はF1では羽化後50日でやっと10%まで上昇したが,F3では羽化後10日で10-20%,40日後には40%まで上昇した.受精率が20%以上になる頃(羽化後10-20日後)にケージ内にオオヒキガエル(南大東島産)を一晩入れて吸血させた.受精している雌は吸血欲が旺盛で,吸血率は60-70%,吸血個体の80%は産卵した.