著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子 岡沢 孝雄 佐々木 均
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.65-71, 2005-06-15 (Released:2016-08-07)
被引用文献数
20 29

2004年6月12-18日に, 琉球列島の西表島の森林地帯の2ヵ所で, 蛙の声をCDプレイヤーで鳴らし, 直ぐ近くにCDCライトトラップを設置し蚊類を採集した.第一地点で合計777個体, 2地点で257個体のハエ目の昆虫が採集された.それらのうち, 次の4種の吸血性昆虫(雌)が両地点で目立って多く採集された.マックファレンチビカは第一地点で580個体(74.6%), 第二地点で193 (75.1), ヤエヤマカニアナチビカ19(2.4)と27 (10.5), ヤマトケヨソイカ106 (13.6)と20(7.8), また, ルソンコブハシカが第一地点のみで39個体(5.0%)が採集された.これらの蚊にケージ内でヌマガエルを暴露すると, 吸血行動が見られ, 多くの個体が吸血した.このことからこれらの蚊は自然界でカエルの鳴き声に誘引され, 吸血していると思われる.
著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子 岡沢 孝雄 佐々木 均
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.65-71, 2005
参考文献数
22
被引用文献数
2 29

2004年6月12-18日に, 琉球列島の西表島の森林地帯の2ヵ所で, 蛙の声をCDプレイヤーで鳴らし, 直ぐ近くにCDCライトトラップを設置し蚊類を採集した.第一地点で合計777個体, 2地点で257個体のハエ目の昆虫が採集された.それらのうち, 次の4種の吸血性昆虫(雌)が両地点で目立って多く採集された.マックファレンチビカは第一地点で580個体(74.6%), 第二地点で193 (75.1), ヤエヤマカニアナチビカ19(2.4)と27 (10.5), ヤマトケヨソイカ106 (13.6)と20(7.8), また, ルソンコブハシカが第一地点のみで39個体(5.0%)が採集された.これらの蚊にケージ内でヌマガエルを暴露すると, 吸血行動が見られ, 多くの個体が吸血した.このことからこれらの蚊は自然界でカエルの鳴き声に誘引され, 吸血していると思われる.
著者
當間 孝子 宮城 一郎 比嘉 由紀子
出版者
琉球大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

蚊は人・哺乳動物の血を吸い病原体を媒介する。哺乳類の吸血行動に関しては多くの研究があり、動物が排出する二酸化炭素や体温を感知し、動物に接近することはよく知られている。最近、我々は冷血動物(蛙)の鳴き声に刺激され、吸血行動を開始する蚊がいることを報告した。本研究では、どんな蚊種がどんな種の蛙の鳴き声に誘引されるのか、それらの音に特徴があるのか、また、誘引された蚊の室内での累代飼育を試み、生態を明らかにすると共に、野外で採集した吸血蚊の吸血源動物を明らかにすることを目的として行った。これらの研究は昆虫媒介性人畜の病原のサイクルの解明、人畜への感染予防対策に役立つと考える。研究の結果、チビカの仲間の蚊、特にUr. macfarlaneiが蛙の鳴き声に多数誘引され、西表島に生息する8種の蛙の声、いずれにも、個体数の違いはあるが誘引されることが明らかになった。本工学部の音声の専門家である高良教授の協力を得て、蛙の鳴き声を分析し、人工音を作成、野外実験を試みたが、蚊を誘引する人工音は特定されてなく、引き続き調査中である。蛙の鳴き声に誘引された西表島産Ur. macfarlaneiは実験室内累代飼育に成功した。1雌が平均61卵粒からなる卵塊を水面に産み、幼虫期間は9-15日、蛹の期間は2-3日で、羽化率は74%であった。羽化成虫は大ケージで自然条件化で交尾し、吸血源として蛙をケージ内に入れると約15%の雌が吸血した。今後本種の実験室内での音に対する反応など生態を明らかにする。本種吸血雌の胃内血液のDNA解析の結果、野外ではサキシマヌマガエル、ヒメアマガエル、アイフィンーガエルを吸血していることも明らかになった。
著者
宮城 一郎 當間 孝子 金城 高子 玉城 美加子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第61回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2009 (Released:2009-06-19)

自然界でカエルの鳴き声に誘引され吸血行動を開始するマクファレンチビカ(Uranotaenia macfarlanei Edwards)の 生態を明らかにするために,室内で累代飼育を試みた.2007年3月と5月に西表島古見(IR系)と沖縄本島北部(Yn系)の森林内でカエル鳴き声トラップにより採集したマクファレンチビカの雌に現地で捕獲したヌマガエルを一晩暴露し吸血させた.琉球大学の実験室に吸血個体を持ち帰り,いろいろな方法で累代飼育を試みた.その結果下記の方法で室内累代飼育に成功した. 成虫は大型ケージ(60 x 60 x 30cm)に,雌雄各100個体を入れて,室内・自然条件下で飼育.ケージ内には綿に染ませた2%砂糖水を吊り下げ,床全面に濡れたタオルをひいた.綿やタオルは2,3日毎に交換し,常時湿らせておいた.カエルを蚊飼育ケージ内で暴露,吸血,2-3日後,水と水草を入れた産卵容器(直径8cm,高さ5cm)をケージ内に置いた.卵(期間は2-3日)は平均40卵からなる塊状で水面に産卵され,浮遊していた.1-3卵塊からふ化した100-120幼虫をバット(32 x 23 x 5cm)に移し,毎日,餌(マウスの固型資料1+エビオス1の粉末)を与えた.バットの水を清浄に保つために,水草を入れ,エアーレイションを行って飼育した.幼虫期間は9-15日,蛹期間は2-3日,羽化率は74%であった.受精率はF1では羽化後50日でやっと10%まで上昇したが,F3では羽化後10日で10-20%,40日後には40%まで上昇した.受精率が20%以上になる頃(羽化後10-20日後)にケージ内にオオヒキガエル(南大東島産)を一晩入れて吸血させた.受精している雌は吸血欲が旺盛で,吸血率は60-70%,吸血個体の80%は産卵した.
著者
岡澤 孝雄 奥土 晴夫 當間 孝子 比嘉 由紀子 宮城 一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第55回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.34, 2003 (Released:2003-08-01)

カニアナヤブカの幼虫の主要な生息場所はアナジャコの穴であるが,成虫の重要な活動である交尾,吸血等は穴の外で行われると考えられる.八重山群島,西表島,古見でカニアナヤブカ成虫のアナジャコの穴への出入りの日周期変化を調べた.マングローブ林の周縁のアナジャコの穴約50個を選び,半分は穴から出る蚊の数を調べるために穴の上に常時ケージを設置した.残りの半分の穴は入ってくる蚊を調べるために調査時のみにケージを置いて,中の成虫蚊を細棒を使いケージの中に追い出し,定時的に蚊数を数えた.雄成虫も雌成虫も日暮から夜の0時までに穴を出て,夜明け頃から穴に入り始める.穴に戻る行動は日中も継続的に観察された.雄成虫のスワームは夜明け直後から1時間弱の間, 穴の上に見られ,そこに飛来した雌との交尾行動も観察された.
著者
武田 富美子 當間 孝子 大友 元 宮城 一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.169-173, 1999
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

幼児が長時間生活をする保育所のダニを調べた。沖縄県宜野湾市と西原町の保育所5カ所で, 1997年2月と7月に3歳児の部屋の床, 昼寝時に使用されるゴザ, 敷布団, 毛布(タオルケット)から塵を集めた。ヤケヒョウヒダニが優占種だった。ダニ数は2月に3,740(サンプル数17), 7月に2,204(サンプル数19)で, 7月の方が少なかった。36サンプル中15サンプルで, 1m^2あたり100以上のダニ数が検出された。ゴザに最も多くのダニが検出され, 2月の総ダニ数の50.2%, 7月の68.9%を占めた。
著者
武田 富美子 當間 孝子 金城 直美 宮城 一郎 佐藤 良也
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.163-168, 2002
参考文献数
13
被引用文献数
1

The study was carried out in central mainland Okinawa to determine the mite densities and fauna in four hospitals. One hundred and twenty-seven dust samples were collected from the floor and bedding in the hospitals in May, August and November 1996, and February 1997. The average number of mites was 30.9/m^2 for the floor and 180.0/m^2 for bedding. There was significant difference in the mite number between the floor and bedding. The genus Dermatophagoides predominated at the rate of 89.6%. In 29 out of 127 samples, Dermatophagoides farinae was more abundant than D. pteronyssinus. Blomia tropicalis was found in low frequency and in small numbers in the hospitals. Five Sarcoptes scabiei were found from a mattress and blanket in a patients room. This species was also found from a mattress and futon in the rest room for hospital staff.
著者
宮城 一郎
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.332-333, 1981-12-15 (Released:2016-09-03)
被引用文献数
1 2

1979年2月21日, パプアニューギニアのマダン市近郊のゴゴールの森で蚊を採集中, 樹幹に営巣されたシリアゲアリの1種Cremastogaster sp.の近辺で乱舞し蟻の口より吸蜜中のカギカMalaya leei (Wharton)を発見した。本短報はこれらカギカの吸蜜行動を詳細に記録したものである。
著者
當間 孝子 宮城 一郎
出版者
琉球大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

マラリアは八重山・宮古諸島を中心に明治時代から報告され、人々の生活に大きな影響を与えていた。1957年より、DDT残留噴霧を中心としたマラリア防圧計画が実施され1962年流行は終息した。沖縄県は国際交流の拠点として重要な位置にあり、人の交流も盛んである。また地球温暖化により、媒介蚊の分布拡大やマラリア原虫が持ち込まれる可能性が高い。マラリアの発生予防の基礎資料を得るために、八重山諸島の本種の生息状況を明らかにした。1.石垣島におけるAn.minimusの生息分布 1998年9〜10月に48、1999年9〜10月には56の河川、渓流、湧き水で調査を行い、調査水域の約70%に本種幼虫の生息を確認した。2.石垣島の4水域における本種の年間の発生消長 幼虫:1998年11月より月2回、柄杓で100すくいし、年間の発生消長を調べた。ファナンと西浜川の幼虫の発生消長パターンは類似し、年間の発生総数も多かった。12月後半から4月前半までは発生個体数は少なく、5月後半から8月前半までは400〜1,000の個体を採集した。市街地に近い新川渓流で最も多い時期は2月後半から4月後半で300〜350個体を採集した。成虫:3渓流近くの牛舎にライトトラップを月2回設置し、1998年11月から1999年10月まで捕獲した。ファナン川近くの牛舎では5月前半から8月後半に個体数が増し、西浜川の牛舎では、調査を行った3地域の中では個体数が最も多かった。冬期は少なく、3月前半から増し、42個体になり、7月前半から8月前半に最も多く、151〜228個体を採集した。新川渓流周辺地域は最も個体数が少なかった。3.西表島およびその他の離島における本種幼虫の生息状況 西表島は20、小浜島では25水域中、それぞれ4、6水域で生息を確認した。小浜島での生息の確認は初めてである。波照間、与那国島では本種の生息は確認出来なかった。
著者
宮城 一郎 當間 孝子 比嘉 由紀子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.337-343, 2008-12-15 (Released:2016-08-06)
参考文献数
23

"Chisuikeyosoika" (hairy biting midges) is a new Japanese name given to the family Corethrellidae Edwards elevated from Chaoboridae Edwards. The features of the family including morphological and biological characteristics of adults and larvae are briefly mentioned. The taxonomic status of the Japanese species of the genus Corethrella: C. japonica (Komyo), C. towadensis Okada and Harada, C. nippon Miyagi and C. urumense Miyagi are also discussed. Corethrella is probably worldwide in distribution but has been overlooked in many areas. Medical entomologists in Japan are expected to pay more attention to the hairy biting midges.
著者
三條場 千寿 Ozbel Yusuf 麻田 正仁 Sumbuu Gantuya 長田 康孝 宮城 一郎 松本 芳嗣
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第62回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2010 (Released:2010-10-12)

サシチョウバエは,パパタシ熱,バルトネラ症,リーシュマニア症などの人獣共通感染症を媒介する昆虫である.我が国における唯一のサシチョウバエとしてPhlebotomus squamirostris Newstead,1923が記載されている.1956年に青森県で9頭のサシチョウバエ採集が記録されて以来(緒方,1958),約50年間国内での報告はない.現在の我が国におけるサシチョウバエの棲息状況を明らかにするため,2008年秋田県,群馬県,鳥取県,沖縄県においてオイルトラップおよびCDCライトトラップを用いサシチョウバエの採集を試みた.その結果,秋田県で27頭(雄15頭,雌12頭),群馬県で491頭(雄369頭,雌122頭),鳥取県で3頭(雄1頭、雌2頭),沖縄県で192頭(雄157頭,雌35頭)を採集した.群馬県で採集したサシチョウバエの詳細な観察を行ったところ,形態学的特徴は1923年に記載されたP.squamirostrisと同じであった.さらに現在のサシチョウバエ同定に用いられているkeyによれば,Sergentomyia属サシチョウバエの特徴を有することが明らかになった.このため日本産サシチョウバエPhlebotomus squamirostrisをSergentomyia squamirostrisと再記載すべきである.国際化による地球規模でのヒト,動物,物資の移動,地球温暖化などの要因により,サシチョウバエの棲息域が拡大し,リーシュマニア症の流行地も拡大しつつある.我が国におけるサシチョウバエの棲息およびサシチョウバエが媒介する諸感染症に対する警戒を行う必要があると考える.
著者
当間 孝子 宮城 一郎 星野 千春 Toma Takako Miyagi Ichiro Hoshino Chiharu 琉球大学保健学部医動物学教室 那覇検疫所那覇空港支所
出版者
琉球大学保健学部
雑誌
琉球大学保健学医学雑誌=Ryukyu University Journal of Health Sciences and Medicine (ISSN:02859270)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.315-319, 1978

A survey was carried out to certain the mosquito fauna of Iheyajima (21 Km^2) north Okinawa Island, in March, May and August 1978. The following 21 species were found on Iheyajima: Anopheles sinensis Wiedemann, Armigers subalbatus (Coquillett) , Culex halifaxii Theobald, Culex pipiens fatigans Wiedemann, Culex pseudovishnui Colless, Culex tritaeniorhynchus Giles, Anopheles lesteri Baisas el Hu, Mimomyia elegans (Taylor), Mimomyia luzonensis (Ludlow), Mansonia uniformis (Theobald), Uranotaenia novobscura Barraud, Uranotaenia jacksoni Edwards, Aedes togoi (Theobald), Aedes albopictus (Skuse), Aedes riversi Bohart et Ingram, Aedes vexans nipponii (Theobald), Culex rubithoracis ( Leicester) , Culex ryukyensis Bohart, Culex bitaeniorhynchus Giles, Culex mimeticus Noe, Culex vagans Wiedemann. Among the species collected, the last 15 had not been previously recorded from Iheyaj ima.
著者
当間 孝子 宮城 一郎 星野 千春 佐久本 微笑 Toma Takako Miyagi Ichiro Hoshino Chiharu Sakumoto Bisho 琉球大学保健学部医動物学教室 那覇検疫所那覇空港支所
出版者
琉球大学保健学部
雑誌
琉球大学保健学医学雑誌=Ryukyu University Journal of Health Sciences and Medicine (ISSN:02859270)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.96-100, 1978

Mosquitoes were collected by light traps at three sites in Naha city for one year (1977-1978) and the following 8 species were collected : Culex pipiens fatigans Wiedemann, Aedes albopictus (Skuse), Armigeres subalbatus (Coquillett), Aedes vexans nipponii (Theobald), Culex tritaeniorhynchus Giles, Culex bitaeniorhynchus Giles, Anopheles sinensis Wiedemann, and Mansonia uniformis (Theobald). Among them, Culex pipiens fatigans was dominant and the number collected was 6,030 (97.7 percent of the total). This mosquito was active through out the year and a few fed and gravid females were found even in the winter season.
著者
宮城 一郎 當間 孝子 比嘉 由紀子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.337-343, 2008
参考文献数
23

"Chisuikeyosoika" (hairy biting midges) is a new Japanese name given to the family Corethrellidae Edwards elevated from Chaoboridae Edwards. The features of the family including morphological and biological characteristics of adults and larvae are briefly mentioned. The taxonomic status of the Japanese species of the genus Corethrella: C. japonica (Komyo), C. towadensis Okada and Harada, C. nippon Miyagi and C. urumense Miyagi are also discussed. Corethrella is probably worldwide in distribution but has been overlooked in many areas. Medical entomologists in Japan are expected to pay more attention to the hairy biting midges.
著者
和田 義人 茂木 幹義 小田 力 森 章夫 鈴木 博 林 薫 宮城 一郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.187-199, 1976-02-28

奄美大島において1972-1975年に蚊の調査を行なった.成虫は畜舎にかけたライトトラップ及び野外でのドライアイストラップにより,幼虫はその発生場所において,1年を通じて採集を行なった.その結果31種の蚊が得られた.上記の方法による採集の記録と,野外で採集した幼虫の飼育の記録とから,各々の種の,特に冬季における,生態について記載した.また,奄美大島での日本脳炎ウイルスの越冬について,伝搬蚊コガタアカイエカの生態の面から考察を加え,ウイルスの越冬が可能なのは,冬の気温が高く,蚊-豚の感染サイクルが持続する場合においてのみであると結論した.Mosquitoes were investigated on Amami-Oshima Island in 1972-1975. Adults were collected by light traps at animal shelters and by dry ice traps in the field, and larvae at their breeding sites in the whole year. In total, 31 species of mosquitoes were found. From the mosquito catches by the above methods together with the rearing records of some larvae collected in the field, the biology of each mosquito particularly in the winter time was reported. Also, the possibility of the overwintering of Japanese encephalitis virus on Amami-Oshima was discussed on the basis of the biology of the vector mosquito, Culex tritaeniorhynchus. It was considered that the successful overwintering of the virus is attained only by the succession of the pig-mosquito cycle maintained by the continuous feeding activity of the vector mosquitoes in warm winter.
著者
宮城 一郎 當間 孝子 長谷川 英男 只野 昌之 福永 利彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.259-262, 1992
被引用文献数
2 6

1990年5月, 8月, 石垣島での日本脳炎伝搬蚊の調査時に, 水田からCulex vishnuiの幼虫と蛹が多数発見された。本種はCx. pseudovishnui Collessと形態的特徴が酷似するためしばしば混同されてきた。Cx. vishnui幼虫の形態的特徴は胸部背面に微細な突起(spicules)を有し, 腹部6-III∿VI毛は2分岐, 1-VI, 1-VI毛は3∿4分岐, 1-V毛は4∿5分岐, 側鱗(combscales)は通常18∿25個であった。本種はこれまで明確な記録はなく, 今回が琉球列島で初の生息記録となる。
著者
當間 孝子 宮城 一郎 武田 富美子 岸本 涼子 阿波根 綾子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.309-319, 1998
被引用文献数
4 2

沖縄県の20健常者家庭において, 寝具, 寝室床細塵中のダニ相やダニ数が調査された。寝具の中ではスプリングベッドマット(GM, 3,076)に, 寝具ではカーペットを敷いた床(4,775)に最もダニが多いことが明らかになった。調査したスプリングベット及びカーペット床の37.5%が1m^2当たり5,001個体以上のダニが採取され, 1,000以下のダニがとれたスプリングベットマットとカーペット敷床はなかった。スプリングベットマットを使用している人の敷布団にはダニが有意に多かった。寝具, 寝室床で最も多くとれたダニはDermatophagoides pteronyssinus(寝具75-99%, 寝室床75-96%)であり, Blomia tropicalis (0.4-11,0.9-5.8), Tyrophagus putrescentiae (0.03-4.2,0.1-9.8)とつづいた。
著者
武田 富美子 當間 孝子 宮城 一郎
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.127-133, 1998-11-25
被引用文献数
4

沖縄県内の床の塵中ダニについては, 従来2.0mmまたは0.5mmメッシュと0.075mmメッシュのふるいを使ってダニを分離した結果が報告されてきた.今回はTarsonemus属のような小型のダニを逃がさないために0.032mmメッシュのふるいを加え, 沖縄県内の3軒の家(A, B, C)から寝室床の塵を採集し各種ダニの出現頻度と出現数を調査した.ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinusが優占種で, 総ダニ数の43.4%であったが, Tarsonemus属のホコリダニTarsonemus spp.は23.4%, Tarsonemus属同様小型のミジンイレコダニCryptoplophora absconditaも12.1%を占めることを確認した.室内塵中から多数のミジンイレコダニが報告されたのはこれが初めてである.ヤケヒョウヒダニ, ホソツメダニCheyletus eruditus, Bak属のツメダニBak sp., イエササラダニHaplochthonius simplex, カザリヒワダニCosmochthonius reticulatus, ミジンイレコダニおよびTarsonemus属のホコリダニは, 年間を通して検出された.また, Cosmoglyphus sp.はこれまで日本の室内塵中からの報告はなかったが, Cの寝室床の5月には総ダニ数の22.2%を占めた.
著者
末永 斂 宮城 一郎 氏家 淳雄 林 薫 三舟 求真人 二ッ木 浩一
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.136-142, 1967-12

アーボウイルスの分離と関連してTanzania国のMwanza地方で1966年8月から1967年2月まで蚊の調査を行なった,蚊からのウイルス分離成績については別報でのべられるので,本報では採集された蚊の種類とそれらの生態についてのべる.この地方は海抜1000米以上の高地で比較的涼しく,6月頃から10月頃迄の乾期と11月頃から5月頃迄の雨期とに区別される.Mwanza及びその周辺における蚊の発生可能水域としてはVictoria湖岸の大小の湿地帯,一部破損した古い水洗便所の浄化槽,流れのとまった小さな河川の水たまり,及びその河口附近の岸辺等がある.成虫の採集は湿地帯の附近,市街地の人家内,森林地帯など9カ所(第2表)で実施し,この中3ケ所では二重蚊帳による夜間吸血活動の時間的消長についても調べた.9地点で採集された蚊は9属約38種,雌25185個体,雄2264個体で,この中,Bukobaの森林地帯で採れたHodogesia sanguinae, Eretmapodites grahamiの2種はTanzania国から初めての採集記録であると思われる.恒久的湿地帯の近くではMansonia africanaとMansonia uniformisが圧倒的に多く,市街地の屋内ではCulex pipiens fatigansのみが採集されるが湖に近い人家の附近ではこれらの3種が共にかなり採集される.H356ウイルスが分離されたCulex decensは比較的大きな恒久的湿地帯の近くでかなり採集された.湿地帯を内部にもったBukobaの閉鎖的森林地帯ではMansonia, Aedes, Orthopodomyia, Culex等に属する18種の蚊が採集された.Anopheles gambiae, An. funestus, Aedesaegypti等は少数採集されたにすぎない.Mansonia africana, M. uniformis及びCulex decensの3種は日没と共に飛来し始め,真夜中にピークを示し,日の出前迄吸血活動をつゞける.Culex pipiens fatigansは日没と同時に飛来し,午後8時頃ピークに達し,一且減少するが,早朝にもう一度ピークを示し,日の出前迄活動するように思われる.Mosquito survey in the highland district of the Republic of Tanzania,mainly in Mwanza region situated at south lake-side of Lake Victoria,Were carried out from August 1986 to February 1967. Over twenty seven thousand mosquitoes representing about 38 species of 9 genera were collected mainly by using human baited traps at nine different sites. Four mosquito species, Mansonia africana, M. uniformis, Culex pipiens fatigans and C. decens, were in about 91 per cent of all mosquitoes obtained in the survey. These Mansonia species and Culex decens seemed to breed in the open-permanent swamps near Lake Victoria, and Culex pipiens fatigans was breeding in cesspools and gutters around dwelling houses. Hodogesia sanguinae and Eretmapodites grahami which had not been found in Tanzania were collected at Munene and Ruasina forests in Bukoba area, and Anopheline mosquitoes, though very small in number, were collected in 10 species. The majority of mosquitoes collected were used for the isolation of arboviruses, however out of them only one strain (H336) was isolated from a pool of Culex decens collected nearby a open-permanent swamp, Mwanza. We wish to express our sincere thanks to all staffs of East African Institute for Medical Research, Mwanza for their kindness to accomplishment of our survey and to staffs of East African Virus Research Institute, Entebbe, Uganda for their kind advices, and also to officers of Mwanza Regional Forest Office and its branches for their kind help to collect mosquitoes in forests.