著者
国島 知子 金城紀子 紀子
出版者
一般社団法人 日本小児リウマチ学会
雑誌
小児リウマチ (ISSN:24351105)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.72-76, 2010

症例は7歳男児.剣道練習中に右足首を捻挫した.免荷療法を施行されたが,両足関節の腫脹と察痛に進展し,受傷6か月後の造影MRIで滑膜の増殖と軟骨破壊を認め, MMP-3が高値であり,若年性特発性関節炎(JIA)少関節型と診断された.受傷9か月後からメトトレキサート(MTX)少量パルス療法を開始したが,松葉杖なしでは歩行が困難となった.関節裂隙の狭小化の進行,MMP-3高値の持続に加え,RF陰性にもかかわらず抗CCP抗体の異常高値を認めた.受傷1年7か月後よりトシリズマブの投与を開始したところ,CRP, ESR, MMP-3が正常化し,関節裂隙の狭小化が著しく改善した.トシリズマブ以外の治療を中止でき,日常生活の制限はなくなった. JIAの関節予後の予測因子として抗CCP抗体の値が有用となり得ることが示唆された.また,トシリズマブは関節型JIA患者の骨・軟骨破壊を抑制して,罹患関節の構造的寛解をももたらす可能性があると考えられた.