著者
仲尾 貢二 金子 幸夫
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.290-293, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

慢性硬膜下血腫(Chronic subdural hematoma : CSDH)術後再発症例に治打撲一方が奏功した症例を報告する。症例は81歳女性,左 CSDH に対して穿頭術を施行した。術後の経時的頭部 CT では血腫は徐々に増大した。再発防止に五苓散,柴苓湯を投与するも再発を防止することができなかった。失語症と右不全片麻痺を認めたため,再手術を行った。術中所見では血腫は粘稠で十分にドレナージできなかった。臨床上および頭部 CT 上の改善に乏しいため,血腫を瘀血ととらえて治打撲一方を投与したところ,投与後3週の時点で右片麻痺が改善,投与後7週の頭部 CT では明らかな血腫の減量を認めた。以上より, CSDH のなかでもドレナージが困難で利水剤に反応しない再発症例に対し,治打撲一方は有用な治療薬になることが示唆された。