- 著者
-
井廻 道夫
金子 隆志
森山 貴志
安藤 量基
- 出版者
- 自治医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1995
HLA B44を有する慢性C型肝炎患者の検討で,HCVコア抗原アミノ酸残基88-96を抗原エピトープとするHLA B44拘束性CTL応答が認められる症例では末梢血HCV RNA量が低値であり,CTLがHCVの増殖に対して抑制的に作用していることを示唆する結果が得られた.また,同一患者において異なった抗原エピトープを認識する2種類以上のCTLが存在することも明らかになった.CTL応答が認められるにも関わらずHCVが存在することは,HCV感染においてはCTL応答が不十分であることが考えられる.抗原エピトープの変異が認められたのは27例中3例と多くはなかったが,その3例のHCVコア抗原アミノ酸残基88-96のアミノ酸配列のペプチドを作製し,HCV特異的CTLに認識されるか,あるいはCTLを効率良く誘導できるかを検討したところ2例では変異エピトープは野生型エピトープと同様に認識されるものの,CTL誘導能は低いことが判明した.他の1例ではむしろ変異エピトープの方が抗原性が強いという結果が得られた.このなかのエピトープの一つを用いて,変異ウイルスが野生型ウイルスと混在した場合にどのような影響がCTL応答に生じるかを検討したところ変異ウイルスは野生型ウイルスと混在した場合には,CTLのウイルス感染細胞障害が抑制されるとともに,変異ウイルスを認識するCTLの増殖も抑制されることが明らかになった.HCVコア抗原アミノ酸残基88-96をHLAB44拘束性に認識するCTLクローンを用いた検討より,C型肝炎においてはCTLはHCV感染細胞を認識しパーフォリン,Fasリガンド,TNFにより認識した細胞を障害すると共に,抗原を認識し活性化したCTLは炎症などにより感受性を獲得した肝細胞をFasリガンド,TNFにより障害し,肝炎の拡大に関与していることが明らかになった.