著者
石井 幹 三塚 あけみ 安部 直重 高崎 宏寿 大宮 正博 金子 香代子
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.93-105, 1981-03-15

屈斜路酪農研修施設において, 1979年5月と7月の2回に分けて, それぞれ15頭づつ導入したホルスタイン種去勢牛29頭に異性双児の雌1頭を含む30頭の間に行われた角突きと, 最高位牛を中心とする社会的順位の決定について, 春に1回, 夏に5回, 計6回調査して, 次のような結果をえた。1.第1回調査〔春期導入牛15頭(去勢牛14頭と雌1頭)〕1)新しく編成のうえ放牧した牛群は, 1日目には激しく闘ったが, 3日目には落着いた。放牧牛1頭1時間当りの角突き回数は1日目が1.3回, 2日目が0.8回, 3日目が0.08回であった。2)角突きでは体重の重い牛が全組み合わせの83%を勝ち, かつ社会的順位が上位の牛はいずれも平均体重より大きかった。3)最高位牛は最も大きい牛であった。4)異性双児の雌牛は10頭の去勢牛と闘い全敗して, 社会的順位は最下位となった。5)最高位牛が群のリーダーになった。6)最上位牛4頭には二つの三角関係があり, 順位型態は直線的, 絶対的ではなかった。2.第2回調査(春期導入牛15頭)1)春期導入牛群の上位牛における社会的順位には, 導入約3ヵ月後に若干の変化があった。2)第一順位とリーダーの地位にある牛は変らなかった。3)異性双児の雌牛の最下位という順位にも変更がなかった。3.第3回調査〔夏期導入牛15頭(去勢牛)〕一カ所に集められた後導入された夏期導入牛群には, 激しい闘争がみられなかったので, この牛群の社会的順位は分らなかった。4.第4回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛の最も体重の軽い3頭, 計18頭)1)夏期導入牛群に春期導入牛のなかの最も体重の軽い牛3頭を合流させたところ, 合流牛の異性双児の雌牛が先住牛群に対して, 最初の積極的闘争を行った。この雌牛は勝率0.93(13頭/14頭)をあげ, 最高位牛にだけ負けた。2)不明であった夏期導入牛群の最高位牛が明らかになった。それは異性双児の雌牛に勝った去勢牛であったが, 体重は群の平均値に近かった。5.第5回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛9頭, 計24頭)第4回調査の18頭の牛群に, 残りの春期導入牛群のなかの体重の軽い6頭を合流させたところ, 先住牛群の最高位牛が全合流牛と闘い全勝し, かつ全群のなかでも勝率1.00(9頭/9頭)をあげて, 新しい牛群の最高位牛となった。6.第6回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛15頭, 計30頭)第5回調査の24頭の牛群に, さらに春期導入牛の残りの6頭を合流させたところ, 春期導入牛群の最高位牛が勝率1.00(10頭/10頭)をあげて, 全群のなかで第一順位を占めた。7.先住牛群が休息形の時に牛を合流させても, 先住牛群が食草を開始するまで角突きを行わなかった。しかし, 食草時に合流させ屈斜路酪農研修施設において, 1979年5月と7月の2回に分けて, それぞれ15頭づつ導入したホルスタイン種去勢牛29頭に異性双児の雌1頭を含む30頭の間に行われた角突きと, 最高位牛を中心とする社会的順位の決定について, 春に1回, 夏に5回, 計6回調査して, 次のような結果をえた。1.第1回調査〔春期導入牛15頭(去勢牛14頭と雌1頭)〕1)新しく編成のうえ放牧した牛群は, 1日目には激しく闘ったが, 3日目には落着いた。放牧牛1頭1時間当りの角突き回数は1日目が1.3回, 2日目が0.8回, 3日目が0.08回であった。2)角突きでは体重の重い牛が全組み合わせの83%を勝ち, かつ社会的順位が上位の牛はいずれも平均体重より大きかった。3)最高位牛は最も大きい牛であった。4)異性双児の雌牛は10頭の去勢牛と闘い全敗して, 社会的順位は最下位となった。5)最高位牛が群のリーダーになった。6)最上位牛4頭には二つの三角関係があり, 順位型態は直線的, 絶対的ではなかった。2.第2回調査(春期導入牛15頭)1)春期導入牛群の上位牛における社会的順位には, 導入約3ヵ月後に若干の変化があった。2)第一順位とリーダーの地位にある牛は変らなかった。3)異性双児の雌牛の最下位という順位にも変更がなかった。3.第3回調査〔夏期導入牛15頭(去勢牛)〕一カ所に集められた後導入された夏期導入牛群には, 激しい闘争がみられなかったので, この牛群の社会的順位は分らなかった。4.第4回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛の最も体重の軽い3頭, 計18頭)1)夏期導入牛群に春期導入牛のなかの最も体重の軽い牛3頭を合流させたところ, 合流牛の異性双児の雌牛が先住牛群に対して, 最初の積極的闘争を行った。この雌牛は勝率0.93(13頭/14頭)をあげ, 最高位牛にだけ負けた。2)不明であった夏期導入牛群の最高位牛が明らかになった。それは異性双児の雌牛に勝った去勢牛であったが, 体重は群の平均値に近かった。5.第5回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛9頭, 計24頭)第4回調査の18頭の牛群に, 残りの春期導入牛群のなかの体重の軽い6頭を合流させたところ, 先住牛群の最高位牛が全合流牛と闘い全勝し, かつ全群のなかでも勝率1.00(9頭/9頭)をあげて, 新しい牛群の最高位牛となった。6.第6回調査(夏期導入牛15頭と春期導入牛15頭, 計30頭)第5回調査の24頭の牛群に, さらに春期導入牛の残りの6頭を合流させたところ, 春期導入牛群の最高位牛が勝率1.00(10頭/10頭)をあげて, 全群のなかで第一順位を占めた。7.先住牛群が休息形の時に牛を合流させても, 先住牛群が食草を開始するまで角突きを行わなかった。しかし, 食草時に合流させると, ただちに闘争を行った。8.体重差が大きい牛群では, 体重が最高位牛を決める最主要々因であった。しかし, 体重差の小さな半群では, 体重が決定的要因ではなかった。家畜の管理16(3) : 93-105.1981 1980年11月18日受理