著者
飯田 涼介 金子 麻衣 纐纈 雄三
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.8-16, 2015-03-05 (Released:2015-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,種雌豚の3産次までの生存割合が低い繁殖農場(LRR農場)の若雌種豚の育成法と生涯繁殖成績を特徴づけることと,低い生存割合に関するマネジメント因子を調べることであった。3産次までの生存割合は,3産次まで生存した雌豚数を初交配雌豚の数で割り算出した。若雌種豚の育成法と農場マネジメントについての調査(性成熟前の制限給餌の有無,育成雌豚の飼料の種類,自家育成雌豚の使用割合)を行うために,2008年に同一の生産記録ソフトを用いる115農場に調査票を送付した。回答のあった81農場(70.4%)の記録を2008年に導入された15,678頭の雌豚の繁殖成績と合わせた。3産次までの雌豚の生存割合の下位25パーセンタイル(71.6%)を基に,農場をLRR農場と普通農場に分類した。農場レベルの分析では,LRR農場は普通農場に比べて,分娩割合が3.4%低く,淘汰割合が7.7%高かった(P<0.05)。また,LRR農場は普通農場に比べて,制限給餌を行う農場,育成雌豚に妊娠豚用の飼料を使用する農場の割合が高かった(P<0.05)。さらに,LRR農場の自家育成雌豚の使用割合は,普通農場に比べて29.2%高かった(P<0.05)。雌豚レベルの分析では,LRR農場の雌豚の繁殖障害による1-3産次までの淘汰割合が,普通農場に比べて6.2-11.2%高かった(P<0.05)。しかし,雌豚の生涯平均離乳子豚数における農場グループ間での差は見られなかった(P=0.79)。マルチレベルの比例ハザードモデルでは,雌豚の淘汰ハザードは,性成熟前の制限給餌と高い自家育成雌豚使用割合に関連したが(P<0.05),育成雌豚の飼料の種類とは関連しなかった(P=0.21)。初交配後60週齢における生存確率は,制限給餌された雌豚で80.1%となり,制限給餌されなかった雌豚で84.1%となった。結論として,雌豚の長期生存性の実現に,性成熟前の過度な飼料制限は勧められない。さらに,自家育成雌豚を使用する際に,若雌種豚の繁殖形質の健全性に関する選抜をより厳しく行うことを勧める。