著者
新村 和則 金川 寛 三上 隆司 福森 武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.87-94, 2005-06-01
被引用文献数
8 9

本研究では日本国内で栽培されている水稲うるち品種の中から, 作付け面積の約99%のシェアを有する130品種(好適酒造品種は12品種)を供試品種とし, これらの品種をすべて判別できるマルチプレックスPCRプライマーセットの開発を試みた.供試した原種または原々種について, 供試品種間での多型DNA断片の塩基配列を決定し, 15組のSTS(Sequence Tagged Sites)化プライマーを設計した.これらのプライマーを1組ずつ用いて130品種それぞれについてPCRを行ない, 品種特有のバンドについて確認した.設計した15組のプライマーが互いに干渉しないよう塩基配列やプライマーの組み合わせ, PCR条件などを検討し4セットに集約した.マルチプレックスPCRを行ない, すべての品種を判別できることを確認した.次に, 複数の都道府県で栽培されている12品種を用いて, 「コシヒカリ」, 「ひとめぼれ」, 「ヒノヒカリ」, 「あきたこまち」, 「キヌヒカリ」, 「日本晴」, 「ササニシキ」, 「ハナエチゼン」, 「祭り晴」, 「あさひの夢」について, これら4つのマルチプレックスPCRプライマーセットを用いてPCRを行ない, それぞれの品種において品種内変異が生じないことを確認した.以上の結果から, 本研究に用いたマルチプレックスPCRプライマーセットは, 日本国内で栽培されているイネの品種判別に有効であると考えられる.