著者
金森 悟 金森 暢子 渡辺 興亜 西川 雅高 神山 孝吉 本山 秀明
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.291-309, 1997-03
被引用文献数
1

南極昭和基地の大気エーロゾルを1988,1989,1990年の3年間にわたり連続観測した。エーロゾル粒子に含まれる化学成分の内, exSO_4^<2->, MSA, NH_4^+等の成分が夏に高く冬に低い季節変化をする事を明らかにした。またガス状のHCl, SO_2,HNO_2,HNO_3の季節変化を明らかにし, 非常に高濃度のHClガスが夏期に出現し, 他の成分もエーロゾルに近い濃度になる事を示した。みずほ高原内陸および海上の大気エーロゾルの粒径分布を明らかにした。exSO_4^<2->とMSAは共に0.35μmに極大粒径を持ち, ガス体から生じた2次粒子であると思われる。ほとんどの大気エーロゾルは海塩に比較して負のexCl^-を示し, Cl^-がNa^+に対して欠損していることが認められた。みずほ高原内の5点における積雪ピットの観測から, 化学成分の季節変化は内陸の観測点でδ^<18>O, Cl^-およびNa^+につき見いだされた。飛雪では, Cl^-, Na^+, exSO_4^<2->, NO_3^-, MSA等の成分が海側で高く, 内陸に向かって減少し, 更に内陸で反転上昇し, 内陸に別の供給源があることを示唆した。ほとんどの雪は正のexCl^-を示した。みずほ高原の大気エーロゾルと対応する雪の間には, 化学成分濃度の比例関係がほぼ認められ, 積雪は大気エーロゾル中の濃度を大まかに反映している。しかしexCl^-, Ca^<2+>, K^+などはこの関係を満足しない場合が多いので, 地表の大気エーロゾル以外に高層大気からの寄与も考慮する必要がある。