著者
MATOBA Sumito(的場澄人) MOTOYAMA Hideaki(本山秀明) FUJITA Koji(藤田耕史) YAMASAKI Tetsuhide(山崎哲秀) MINOWA Masahiro(箕輪昌紘) ONUMA Yukihiko(大沼友貴彦) KOMURO Yuki(小室悠紀) AOKI Teruo(青木輝夫) YAMAGUCHI Satoru(山口悟) SUGIYAMA Shin(杉山慎) ENOMOTO Hiroyuki(榎本浩之)
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
Bulletin of Glaciological Research (ISSN:13453807)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.7-14, 2015 (Released:2015-12-08)
参考文献数
20
被引用文献数
10

During spring 2014, we drilled an ice core on the northwestern Greenland Ice Sheet, recovering a core of total length 225m. We also conducted stratigraphic observations, measurements of the density of the ice core, near-infrared photography of the ice core, preparation of liquid samples for chemical analysis, and measurements of borehole temperature. The pore close-off depth was 60m, and the temperature in the borehole was −25.6°C at a depth of 10m. In addition, we conducted snow-pit observations, ice-velocity and surface-elevation measurements using the global positioning system (GPS), meteorological observations, and installation of an automated weather station (AWS).
著者
本山 秀明
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.247-255, 2010 (Released:2010-10-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

The accumulation rate, aerosol flux, and air temperature fluctuation can be determined from the study of ice cores drilled through ice sheets and glaciers. The aerosol which gives climate and environmental information is accumulated on the surface of ice sheet. In order to elucidate the climate and environmental changes, it is necessary to find the changes in concentration, composition, and isotope ratio of impurities in accumulated particles after the deposition on the snow surface. This study revealed that the global climate and environmental changes have occurred on various time scales in the past million years. The characteristics of aerosol particles deposited on the Antarctic ice sheet are investigated. Furthermore, the history of solar activity and associated geomagnetic fields is clarified by analyzing the cosmogenic nuclides in ice cores. An interdisciplinary study on ice cores is also carried out to elucidate the evolution mechanisms of microorganisms in the ice cores.
著者
亀田 貴雄 本山 秀明 藤田 秀二 高橋 修平
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.151-158, 2008-06-30
被引用文献数
1

1995年1月25日に南極ドームふじに36本雪尺(20m間隔で100m×100m)が第36次南極地域観測隊により設置され,それ以来雪尺の高さが継続的に測定されてきた.ドームふじ基地で越冬観測を実施した4年間(1995年1月から1997年12月及び2003年1月から2004年1月)は月2回測定し,それ以外は年1回の測定(1月上旬が多い)を実施した.この結果,1995年から2006年までのドームふじの年平均表面質量収支は,27.3±1.5kgm^<-2>a^<-1> であることが推定できた.これは,ドームふじ浅層コアから推定された西暦1260年から1993年までの平均値(26.4kgm^<-2>a^<-1>)と近い値であった.また,ドームふじでは1年後に雪尺の高さが等しいかもしくは高くなっている「負の年間表面質量収支」が8.6%の確率で起こっていることがわかった.南極内陸に位置するボストーク,南極点,ドームCでの同様な観測結果と比較することにより,負の年間表面質量収支は年平均表面質量収支の増加とともに減少し,190kgm^<-2>a^<-1> 以上の地点ではで負の年間表面質量収支は95%の信頼水準で起こらず,正の年平均表面質量収支が期待できることがわかった.190kgm^<-2>a^<-1> 以上の年平均表面質量収支は地域により異なるが,現在の南極氷床ではおおよそ標高1500-2500mに相当するので,この標高域では毎年の積雪が氷床に記録されている地点が多いことが推定できた.一方,ボストークでのピット観測結果を参考にして,現在及び氷期のドームふじコアでの年層欠損確率をそれぞれ9.4%,11.4% と見積もった.この他に,ドームふじで1本の雪尺を1年間観測した時に得られる年平均表面質量収支の誤差,10年後の再測定で得られる年平均表面質量収支の誤差などを論じた.
著者
青木 輝夫 本山 秀明 竹内 望 的場 澄人 堀 雅裕 八久保 晶弘 山口 悟 田中 泰宙 岩田 幸良 杉浦 幸之助 兒玉 裕二 藤田 耕史 朽木 勝幸 庭野 匡思 保坂 征宏 橋本 明弘 谷川 朋範 田中 泰宙 植竹 淳 永塚 尚子 杉山 慎 本吉 弘岐 下田 星児 本谷 研
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

グリーンランド氷床上での現地観測から、涵養域ではアルベド低下に対するブラックカーボン(BC)等積雪不純物の寄与は小さく、積雪粒径増加効果の方が大きいことが分かった。また2012年7月の顕著な表面融解には下層雲からの長波放射が効いていた。消耗域では表面の不純物中に微生物が大量に含まれ、アルベド低下へ大きく寄与していた。衛星観測から2000年以降の氷床表面アルベドの低下原因を解析した結果、涵養域では積雪粒径の経年増加が主要因で、消耗域では裸氷域と微生物を含む暗色域の拡大が原因であった。内陸域で深さ223mの氷床コアを掘削し、その解析からBC濃度は1920-30年に現在の数倍程度高いことが分かった。
著者
平沢 尚彦 本山 秀明 山田 恭平 杉浦 幸之助 栗田 直幸
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.67-77, 2021 (Released:2021-09-01)
参考文献数
19

超音波積雪深計を搭載したAWS(Automatic Weather Station)を,2016 年1 月から2019 年10 月 にかけて4 つの地点に新設した.それらの地点は,海岸域のH128,カタバ風が発達する大陸斜面域 のMD78,大陸斜面上部の内陸高地域のNRP,氷床頂上部のNDF である.この観測システムの目的 は,広域にわたる南極氷床の地域特性を把握しながら,総観規模擾乱や日変化による堆積の時間変化 を明らかにすることである.本論文はこれらの4地点で観測された雪面レベルの時間変動について調 べた.その結果以下のことが分かった.1)雪面レベルの時間変化には階段状の変動とパルス状の変 動がある.雪面レベルの上昇は主に階段状の上昇によりもたらされる.2)H128 及びNRP の比較に よって広域に同時に雪面レベルの変動が表れた4 つの事例が見いだされた.これらの事例では総観規 模擾乱に伴う雲域が氷床上に侵入していたことがNOAA の赤外画像から示唆された.3)雪面レベル の比較的大きな変動は異なる地点で同じ日に起こっていないことの方が圧倒的に多い.4)NRP 以外 の3地点において,暖候期にゆっくりとした雪面レベルの低下が観測された.
著者
植竹 淳 東 久美子 本山 秀明
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-67, 2012-03

氷床アイスコア中には,鉱物粒子と共に輸送されてきた微生物が含まれる事が知られている.これら微生物の細胞数の計測には,蛍光顕微鏡による直接観察法が用いられるが,細胞数が少ないアイスコア試料では蛍光染色試薬の退色により数を過小評価しやすい一方で,含まれる鉱物などの非特異的な蛍光により過大評価しやすいため,定量的に細胞数を測定する事が困難である.本研究では5種の退色防止試薬から退色が最も少ないもの,19種の蛍光染色試薬から非特異的蛍光との選別が容易な試薬をそれぞれ選出し,細胞壁構造の異なる6種の微生物株を用いて染色選択性を確認し,鉱物の混入による染色への影響を調べた.その結果,退色防止試薬にはEverBrite Mounting Medium(Biotium製),蛍光染色試薬にはYOYO-1(Molecular Probes)が最も適していることがわかり,鉱物が混入する場合は濃度をやや高めに調整することで定量性が高くなる事が示された.
著者
高橋 昭好 藤井 理行 成田 英器 田中 洋一 本山 秀明 新堀 邦夫 宮原 盛厚 東 信彦 中山 芳樹 渡辺 興亜 Akiyoshi Takahashi Yoshiyuki Fujii Hideki Narita Yoichi Tanaka Hideaki Motoyama Kunio Shinbori Morihiro Miyahara Nobuhiko Azuma Yoshiki Nakayama Okitsugu Watanabe
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.25-42, 1996-03

南極氷床の深層掘削を行うため, 国立極地研究所は掘削装置開発小委員会等を設け, 1988年以来開発研究を行ってきた。開発の経緯については, 中間報告, 深層掘削ドリルの最終仕様, その完成までの経過にわけて, それぞれ報告してある。本報告では開発した深層掘削システムとその周辺装置について, ドームふじ観測拠点の掘削場の配置, 掘削作業の流れを説明したのち, 各論において, ウインチ, ケーブル, マスト, 操作盤, チップ回収器等の開発の経緯を設計基準, 具体的設計, 製作の流れに準じて説明した。
著者
平沢 尚彦 青木 輝夫 林 政彦 藤田 耕史 飯塚 芳徳 栗田 直幸 本山 秀明 山内 恭
巻号頁・発行日
2016-12-02

第7回極域科学シンポジウム/横断セッション:[IL]極域科学における学術の大型研究計画について12月2日(金)国立極地究所 3階セミナー室
著者
高橋 修平 亀田 貴雄 本山 秀明 Shuhei Takahashi Takao Kameda Hideaki Motoyama
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.特集号, pp.117-150, 2008-06-30

本報告は,1991年から2007年(第32次南極地域観測隊から第48次隊)に東南極氷床の内陸域に位置するドームふじ基地を中心として実施された「ドームふじ観測計画」で得られた雪氷・気象観測の主要な成果を取りまとめたものである.現地での雪氷・気象観測は,「基本観測」及び「研究観測」として実施された.前者は,ドームふじ観測計画として立案したものであり,後者は南極地域観測隊に参加した研究者が立案したものである.2001年から2007年(第42次隊から第48次隊)まで実施された第二期ドームふじ観測計画期間での基本観測については,観測方法及び現地での観測実施状況を詳しく述べた.なお,ドームふじ観測計画により得られた雪氷・気象観測結果を報告する論文・報告は現在までに157編,学会等での口頭・ポスター発表は243件であった.
著者
東 久美子 塚川 佳美 近藤 豊 Dallmayr Remi 平林 幹啓 尾形 純 北村 享太郎 川村 賢二 本山 秀明 的場 澄人 青木 輝夫 茂木 信宏 大畑 祥 森 樹大 小池 真 小室 悠紀 對馬 あかね 永塚 尚子 繁山 航 藤田 耕史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

2014年春にグリーンランド氷床北西部のSIGMA-Dサイトで225メートルの深さまでのアイスコアが掘削された。積雪のアルベドに影響を及ぼす物質として注目されているブラックカーボン(BC)の変動を高時間分解能で復元するため、国立極地研究所で開発されたアイスコア連続融解析装置(CFA)を用いてこのコアの深度6~113mを高時間分解能分析した。CFAはアイスコアを融解しながら連続的に分析する方法であるが、融解部に接続したWide-Range SP2 (Single Soot Photometer)によりBCを分析した。コアの上部6mは空隙の多いフィルンであり、CFAを用いることができなかったため、約5cmの長さ毎に切り、試料表面の汚染を除去して融解した後、SP2で分析した。主としてナトリウムイオン濃度と酸素同位体比の季節変動を利用してこのコアの年代決定を行い、1年を12に分割して月毎の変化を調べた。ブラックカーボンの質量濃度と数濃度はともに1870年頃から増加し始め、1920~1930年頃にピークを迎えたが、その後減少に転じた。1870年頃からの濃度の増加は、化石燃料の燃焼によって発生する人為起源のブラックカーボンがグリーンランドに流入したためであると考えられる。化石燃料起源のBC濃度の増加に伴ってBCの粒径が大きくなる傾向が見られた。これはグリーンランドに到達する化石燃料起源のBCの粒径が森林火災起源のものよりも大きいことを示唆している。BC濃度の季節変動を調べたところ、BC濃度の増加は主に秋~冬に生じていることが分かった。また、人為起源のBCの影響がない時代にはBC濃度は夏にピークを示していたが、人為起源のBCが多量に流入した時代には冬にピークを示していたことも分かった。夏にはしばしばBCが短期間だけ50µg/Lを超える高濃度になることがあったが、これは森林火災によるものと考えられる。本発表では、SIGMA-Dコアの結果を他のグリーンランドコアと比較して議論する。
著者
野呂 和嗣 服部 祥平 植村 立 福井 幸太郎 平林 幹啓 川村 賢二 本山 秀明 吉田 尚弘 竹中 規訓
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2017

<p>アイスコアに保存された硝酸の濃度及び安定同位体組成(d<sub>15</sub>N)は、古気候解析において有力な情報であると考えられる。しかし、硝酸は積雪として沈着した後、揮散もしくは紫外線による光分解反応によって消失することが知られており、このときに同位体分別を伴うことから、残留した硝酸には<sub>15</sub>Nが濃縮し大気中硝酸のd<sub>15</sub>N値比べて極めて高いd<sub>15</sub>N値が観測される。この沈着後の硝酸分解過程は清浄な南極大気において貴重な窒素酸化物生成源であり、南極における大気化学反応場(= 大気酸化剤の相対寄与)を変化させる重要な要因でもある。このように、南極における硝酸の積雪後の変化を解明するため、本研究では東南極ドローニングモードランドの沿岸部から内陸部にかけて採取された雪中の硝酸のd<sub>15</sub>N値を分析し、積雪中の硝酸光分解反応の地域間差異を推定した。</p>
著者
藤井 理行 本山 秀明 成田 英器 新堀 邦夫 東 信彦 田中 洋一 宮原 盛厚 高橋 昭好 渡辺 興亜 Yoshiyuki Fujii Hideaki Motoyama Hideki Narita Kunio Shinbori Nobuhiko Azuma Yoiti Tanaka Moriatsu Miyahara Akiyoshi Takahashi Okitsugu Watanabe
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.303-345, 1990-11

南極氷床のドーム頂上での深層コア掘削計画(ドーム計画)の準備の一環として, 1988年から掘削装置の開発を進めている。本報告は, 2年間の基礎開発段階における研究と実験の結果をまとめたもので, 今後の実用機開発段階を前にした深層掘削機開発の中間報告である。掘削方式としては, 消費電力が少なく, 装置の規模が小さいエレクトロメカニカル方式を採用することとし, 効率の良いドリルをめざし, 切削チップの輸送・処理・回収機構, 切削機構, アンチトルク機構, センサー信号処理と掘削制御機構など各部の検討, 実験を進めた。特に, 液封型のメカニカルドリルの最も重要な切削チップの処理機構では, A型からE型までの方式を比較実験し, A型とC型が優れた方式であることが分かった。国内および南極での実験を通じ, ドリル主要機構の諸課題が解決され, 実用機開発にめどが立った。A deep ice coring system, which is to be used a top the Queen Maud Land ice sheet in 1994-1995 with a plan named "Dome Project", has been developed since 1988. A mechanical system was adopted because of its less power consumption and smaller size compared with a thermal system. Experiments were done for mechanisms of ice cutting, chip transportation, chip storage, antitorque, monitoring sensors, and winch control with a 20-m drill experiment tower. Experiments were also done in Antarctica. This is an interim report of the development of the JARE deep ice coring system.
著者
渡辺 興亜 本山 秀明 神山 孝吉 藤井 理行 古川 晶雄 東 久美子 島田 亙
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

氷河や氷床など氷久雪氷層中には大気中からさまざまな物質がさまざまな過程を経て混入している。それらの物質は雪氷層中に初期堆積状態を保ち、あるいは続成過程の結果として保存される。このように保存された各種物質の濃度、組成、存在形態は雪氷コア中に特色ある情報系を構成し、堆積環境、気候状態の情報指標(シグナル)となる。とりわけ物質起源に関して地球環境、輸送機構に関して大気環境と大きく結びついているエアロゾル起源物質は地球環境情報の指標として重要である。本研究ではエアロゾル起源物質の雪氷層への(1)初源的堆積過程、(2)積雪の変態過程に伴う二次堆積-移動過程、(3)定着化過程を積雪の氷化過程を中心課題として研究を進め、(4)指標シグナル全体としての特性の形成機構を中心に解析をおこなった。極域にはさまざまな起源からエアロゾルが大気循環を通じて転送され、極域大気循環を通じて雪氷層に堆積する。降水の同位体組成とともに、エアロゾル物質の濃度、組成化、その他の指標特性はさまざまな時間規模の大気環境、雪氷堆積環境の状態とその変動特性を指標する。しかしその指標特性は単純ではない。エアロゾルの輸送、堆積に関る大気環境と堆積後の諸過程に関る雪氷堆積環境にはさまざまな地域特性を反映しているからである。極域における雪氷コアから抽出できる各種の指標シグナルは極めて豊富であるが、指標特性の形成の過程と形成の機構の解明に不可欠な再現実験が困難という問題が存在する。そのため、本研究ではフィールド観測対象域として極域の積雪変態過程とほぼ同様な変態、氷化の諸過程が生じる、北海道東北地方の内陸部を選び、二冬期間に観測を実施した。わが国の積雪域は現在の気候下では季節雪氷圏であり、氷久雪氷圏の極域雪氷の諸現象との相違も大きいが基礎観測としてほぼ十分な成果をあげることができた。
著者
西村 浩一 高橋 修平 本山 秀明 小杉 健二 根本 征樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

風力発電と太陽光パネルを用いた吹雪計測システムの開発を試みた。低温風洞で出力特性等の検証後、国内は新潟県と北海道、国外ではフランスアルプスで性能試験を行った。2013年には南極の昭和基地近傍の氷床上で、約2カ月にわたる吹雪の自動観測に成功したほか、フランスと共同でアデリーランドの観測タワーで吹雪フラックスの鉛直分布を求めた。また英国と共同で砕氷船により南極海の棚氷を周回し、海塩エアロゾルの供給源としての吹雪の寄与の測定を行った。一方、メソスケール気象モデルWRFで南極氷床上における気象要素の時系列変化を求め、これに基づいて算出された吹雪量を2000年の南極みずほ基地での観測結果と比較した
著者
松崎 浩之 笹 公和 堀内 一穂 横山 祐典 柴田 康行 村松 康行 本山 秀明 川村 堅二 瀬川 高弘 宮原 ひろ子 戸崎 裕貴
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

南極ドームふじアイスコア中の過去72万年にわたる宇宙線生成核種記録を加速器質量分析で分析した。特徴的な宇宙線イベント(ラシャンプ、ブレーク、アイスランドベイズン)を詳細に解析したところ、宇宙線生成核種(特にベリリウム10)の記録が、グn一バルなイベントの記録となっていることが証明された。これにより、古環境研究における、より信頼性の高い年代指標を確立する道が拓けた。
著者
亀田 貴雄 川村 彰 高橋 修平 本山 秀明 古川 晶雄
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

南極氷床の沿岸域から内陸 1000kmに位置するドームふじ基地までの雪面の起伏状況を雪上車および橇に搭載した3次元加速度計を用いて定量化し,その分布の特徴を明らかにした。ドームふじ基地では雪尺を用いた積雪堆積量観測を継続し, 2008年以,年間積雪堆積量は 1995~2006年と比べると変動が大きくなったことを見いだした。また, 2003年 11月 14日未明にドームふじ基地で起こった皆既日食中の気象観測データの解析を進め,急変する日射量の変動による気温と雪温の変化の状況を明らかにした。
著者
若浜 五郎 小林 俊一 成田 英器 和泉 薫 本山 秀明 山田 知充
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

温潤積雪の高速圧密氷化過程は、野外観測と実験室における定荷重圧縮実験によって研究した。野外観測では、温潤な平地積雪と雪渓の帯水層に長期間浸っている積雪とに着目して、その圧密状態や過程を観測した。その結果融雪開始時期から全層濡れ雪になるまでの時期に、積雪は急激に圧密されてその密度を増し、2mを超えない自然積雪では、およそ濡れ密度0.46ー0.5g/cm^3に達した後、消雪までの間この密度に保たれることが分かった。雪渓下部帯水層の水に浸った積雪は、そのすぐ上部の濡れ雪に比べると圧密速度が約3倍も大きいこと、帯水層に長期にわたって大きな上載荷重がかかっているため、最終的には乾き密度の0.75g/cm^3濡れ密度にして、0.83g/cm^3以上にまで圧密され、これが初冬の寒気により凍結し氷化することが明かとなった。定荷重圧縮実験は、水に浸った積雪について集中的に実施した。圧力は温暖氷河や雪渓の帯水層内の積雪に、実際に作用している0.1ー2kg/cm^2の範囲を用いた。実験の結果、歪速度は積雪の粒径にほとんど依存しないこと、圧力の増加と共に増加し、圧力が1kgf/cm^2を越えると急激に圧密され易くなることなどが定量的に明かとなった。歪速度の対数と密度の間には直線関係が成り立ち、かつ、直線には乾き雪の定荷重圧縮実験と同様、ある密度に達した時点で折れ曲がりが認められた。氷化密度0.83g/cm^3に達するまでに用する時間は、簡単な理論的考察から、上載荷重を与えることにより推定可能となった。実験結果をいくつかの経験式にまとめると共に、実験結果から、氷河や雪渓の帯水層における圧密氷化機構を説明出来るようになった。圧密機構のより詳細な理解のために、圧密過程を圧密に進行に伴う積雪内部構造の変化と関連付ける計画である。また相対的に実験の困難な濡れ雪の圧密特性の研究は今後に残されている。