著者
金田 浩由紀
出版者
関西医科大学医学会
雑誌
関西医科大学雑誌 (ISSN:00228400)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1-10, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
36

臨床倫理コンサルテーションは医療従事者から希求されているが,その普及は十分ではない.臨床倫理的なジレンマが存在するというコンセンサスはあるものの,どのように対応するのかのコンセンサスがないことが課題である.本稿では,臨床倫理コンサルテーションでの具体的な対応について考察していく.まず臨床倫理に関する過去の文献を振り返り,臨床倫理の具体的な作業について考察をし,その本質は価値の比較考量と選択であることを明らかにし,その手順を4段階に整理した.次に,臨床倫理コンサルテーションの手順を確認し,当事者への応答について考察を行い,自験例から典型的な臨床倫理的問題への確認事項の返答と価値判断を伴う返答における具体例を示し,円滑に活動できるための手順の提案を行った.これらにより,臨床倫理支援が病院機能として医療安全対策や感染防止対策と同じ様に,恒常的に機能するための一助となることを期待する.
著者
馬庭 知弘 齊藤 朋人 金田 浩由紀 南 健一郎 齊藤 幸人
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.221-226, 2008-06-20

背景.外来抗がん剤治療中で軽度の呼吸器感染症状を認めることがあるが,重度の好中球減少を伴わない場合は抗菌剤投与で経過をみることが多い.今回,外来化学療法中の症例で突然の呼吸不全を生じた症例を経験したので報告する.症例.68歳男性.2007年7月中旬に右中葉肺扁平上皮癌(pT4N0M0)に対して右中葉切除術施行,術後補助療法として外来にてCBDCA+TXLを3コース施行中に,数日前より継続する咳,膿性痰の増悪,さらに早朝からの38℃の発熱のため外来受診.胸部CTでは末梢の気腫性病変周辺に淡い浸潤影を認め,白血球数3300/mm^3.CRP値6.43mg/dlであった.同日14時50分の時点では,著変なく経過していたが,15時15分より突然の呼吸苦,38.9℃の発熱,ピンク色の泡沫状痰が出現し,酸素を投与するも経皮的酸素飽和度は80〜90%であった.ICUへ移室し気管内挿管施行.人工呼吸管理を含む集中治療にて救命しえた.結語.外来抗がん剤治療中に軽度の好中球減少や呼吸器感染を示す症例の中でARDSへ移行する症例があり,慎重な外来観察を要する.